第1章 名詞文
◆1 名詞文(1)
*この課の本文には、どれも動詞がありません。動詞のない文を名詞文といいます。名詞文は、主語と属詞という少なくとも2つの要素から構成されます。
*名詞文を翻訳する時は多くの場合、「です」を加えます。
(例)نَذِيرٌ تِلْمِيذٌ ナジールは生徒です。
<主語> <属詞>
◆2 疑問詞(1) مَنْ と هَلْ
* مَنْ (誰が)は人の場合に用いられる疑問詞です。
(例) مَنْ هَذَا ؟ この人は誰ですか。
* هَلْ (ですか)は文頭に立ち、平叙文を疑問文に変換します。
(例) هَلْ نَذِيرٌ رَجُلٌ ؟ ナジールは[大人の]男性ですか?
◆3 近称指事代名詞(1) هَذَا
* هَذَا は、近くにあるものを指す近称指事代名詞の男性単数形です。
(例) هَذَا عُمَرُ この人はウマルです。
*この語の第1音節は長母音ですが、長母音であることは普通表記されません。ただし、短いアリフを中間に書き添えて、長母音であることを示すことがあります。
*この語は [ ha:dha:] と発音され、 هَذَا または ه'ذَا のように書かれますが、決して هَاذَا のように書かれることはありません。
◆4 分離型代名詞(1) هُوَ
*この語は、分離型代名詞(あるいは主格代名詞)の三人称男性単数形です。
(例) هُوَ وَلَدٌ 彼は男の子です。
*属詞が文法的に限定されている場合、分離型代名詞は主語を属詞から切り離す目的で用いられます。
(例) عَلِيّ هُوَ النَّجَّارُ アリーは大工です。
*なお、上の文で分離型代名詞がないと、単なる同格表現とみなされます。
(例) عَلِيّ النَّجَّارُ 大工のアリー
◆5 冠詞
*アラビア語には不定冠詞はありません。多くの場合、語末をタンウィーン化することで代用されます。
(例) وَلَدٌ ある男の子
*アラビア語の定冠詞は اَلْ です。語を文法的に限定するために用いられます。
(例) اَلْوَلَدُ その男の子
*ただし、冠詞が「太陽文字」に接頭された時は ل は発音されず、直後の太陽文字がシャッダで強子音化されます。
(例) اَلتِّلْمِذُ その生徒
◆6 ワスラ記号
*冠詞を冠せられた語が文頭に立つ時、冠詞冒頭のアリフは発音されますが、文中にある時は、常に発音が省略されます。その場合正式には、アリフの上には連音を示すワスラ記号(= ٱ )がつけられます1。
(例1) اَلتَّبِيبُ رَجُلٌ その医者は男性です。
(例2) عَلِيٌّ هُوَ ٱلنَّجَارُ アリーは大工です。
*なお、文中にあってワスラ記号で始まる語は、常に直前の音節と連続して発音しなければなりません。しかし、直前の音節がスクーンの場合はそれが不可能になるため、一時的に短母音に変えて発音します。多くの場合、カスラ(=[i] 音)に変更されます。
(例) هَلِ ٱلتِّلْمِيذُ نَذِيرٌ ؟ その生徒はナジールですか?
◆7 男性の人名 عُمَرُ
*この語は男性の人名を示す固有名詞です。語末でタンウィーンをとらないことに注意してください。
1なお、本書ではワスラ記号は省略し、冠詞は単に ال と表記します。