◆1 名詞文(5)
*もし名詞文で、属詞が「前置詞+名詞」で構成されていて、かつ主語が非限定相であるならば、主語は属詞の後に置かれます。
(例1) عَلَى الفِرَاشِ غِطَاءٌ
そのベッドの上には毛布があります。[主語は非限定相の男性名詞]
(例2) عَلَى المَكْتَبِ وَرَقَةٌ
その机の上には紙があります。[主語は非限定相の女性名詞]
*なお、既に第5課で学んだように、主語が文法的に限定されている場合は、属詞は主語の後に置かれます。
(例3) الكُرَةُ الحَمْرَاءُ عَلَى المَائِدَةِ
赤いボールは椅子の上にあります。[主語は限定相の女性名詞]
◆2 前置詞 لِ
*この前置詞が定冠詞のついた名詞に先立つと、定冠詞のアリフがなくなります。
(例) لِ + الطَّبِيبِ ← لِلطَّبِيبِ
*所有の観念を表す時に用いられるのは、主にこの前置詞です。
(例) لِلطَّبِيبِ مَكْتَبٌ كَبِيرٌ その医者には大きな机があります。
[→その医者は大きな机を持っています。]
*この名詞文の主語は مَكْتَبٌ (机)であることに注意してください。この語が主格に置かれているのはそのためです。
◆3 二段変化
*私たちは既にいくつかの固有名詞( زَيْنَبُ ، عَائِشَةُ ، عُمَرُ ، مَرْيَمُ )がタンウィーンをとらないことを見てきました。また、第5課で色彩を表す形容詞もタンウィーンをとらないことを学びました。こういう語は《二段変化》と言われます。
*二段変化は特殊な活用をします。主格の語尾は فُ [u] ですが、所有格と対格の語尾は فَ [a] です。つまり、所有格と目的格の語尾は同じなので、結局2つの格しかありません。
(例1) هَذِهِ االبِنْتُ لَيْسَتْ زَيْنَبَ この少女はザイナブではありません。[名詞の対格]
(例2) هَذَا السِّرْوَالُ لَيْسَ لِزَيْنَبَ このズボンはザイナブのものではありません。[名詞の所有格]
(例3) هَذِهِ الوَرَقَةُ لَيْسَتْ بَيْضَاءَ この紙は白くありません。[形容詞の対格]
(例4) القَلَمُ عَلَى وَرَقَةٍ بَيْضَاءَ その鉛筆は白い紙の上にあります。[形容詞の所有格]
*ただし、二段変化する語が、たとえば定冠詞をとるなどして文法的に限定されると、その所有格は فِ [i] の音をとります。これを「三段変化に変わった」と言います。なぜなら、3つの格を通して語尾が変化する語を《三段変化》と言うからです。
(例) القَلَمُ عَلَى الوَرَقَةِ البَيْضَاءِ その鉛筆はその白い紙の上にあります。[形容詞の限定相所有格]
◆4 同格
*他の名詞と同格に置かれた名詞は、その名詞と同じ格をとります。
(例) عِنْدَ الطَّبِيبِ عُمَرَ 医者のウマルのところに
*この例文で الطَّبِيبِ と عُمَرَ は、いずれも所有格に置かれています。後者が عُمَرَ と [a] で終わっているのは、この語が二段変化だからです。
◆5 名詞の性(2)
*既に第3課で学んだように、一般に物質名詞や抽象名詞はター・マルブータで終わっていれば女性名詞、それ以外の場合は男性名詞です。しかし、この規則には例外があります。いくつかの物質名詞はター・マルブータで終わっていないのにもかかわらず、女性名詞です。こうした名詞は《固有女性名詞》と呼ばれます。
(例) أَرْضٌ 土地、床
◆6 前置詞 عِنْدَ
*この前置詞の原義は「〜のところに」という意味ですが、非常にしばしば、所有観念を表す時にも用いられます。
(例1) عِنْدَ سَلِيمٍ كُرَةٌ サリームのところにボールがあります。
または、サリームはボールを持っています。
*上の例文で、後者の意味は次のように لِ を用いても表せます。
(例2) لِسَلِيمٍ كُرَةٌ サリームはボールを持っています。
*原則的に、この2つの文の間には微妙なニュアンスの違いがあります。 لِ を用いると、そのボールはサリームに帰属するボールであることが明瞭に示されますが、 عِنْدَ を用いると、単にサリームが今ボールを持っていることだけが示され、そのボールは必ずしもサリームのものであるとは限りません。