◆1 強制対格語(1)

لَكِنَّ (しかし)や لِأَنَّ (なぜなら)に先行された名詞は、たとえ主語でも強制的に対格に置かれます。このため、 لَكِنَّ لِأَنَّ は《強制対格語》と呼ばれます。

لَكِنَّ の第1音節は長母音であることに注意してください。 ل'كِنَّ のように書かれることはありますが、 لاَكِنَّ のように書かれることは決してありません。


◆2 句構成(2)

*句の冒頭語に付加形容詞を加える時は、定冠詞を添えて補語名詞の後に置きます。

(例) صَدْرَةُ نَذِيرٍ السَّوْدَاءُ ナジールの黒いチョッキ

*句は3語以上で構成される場合もあります。

(例1) ذَنَبُ قِطِّ نَذِيرٍ ナジールの猫の尻尾

(例2) أَنْفُ كَلْبَةِ زَيْنَبَ ザイナブの牝犬の鼻

*多数の語で構成された句の場合、句の冒頭語は文中の機能に応じて自由に格変化しますが、その他の語はいずれも補語名詞として、強制的に所有格に置かれます。句の最後の構成語は文法的に限定されることも限定されないこともありますが、その前の語はすべて文法的に限定されているとみなされ、定冠詞もタンウィーンもとることはありません。


◆3 接尾型代名詞(1)

هُ هَا は接尾型代名詞です。 هُ は「彼の、(または)その」、 هَا は「彼女の、(または)その」の意味です。

*これまで学んだ代名詞は《分離型代名詞》と呼ばれますが、この新しい型の代名詞は《接尾型代名詞》と呼ばれます。なぜなら、この型の代名詞は常に、他の語(名詞、動詞、強制対格語、及び前置詞)の接尾辞になるからです。

*接尾型代名詞が名詞を修飾している場合、接尾型代名詞はその名詞の補語の働きをしているので、句の最後の構成要素とみなされます。

(例) قِطُّهُ 彼の猫

*接尾型代名詞がついた名詞は、必然的に句の冒頭語になります。そのため文法的に限定されているとみなされ、定冠詞もタンウィーンもとりません。

*ター・マルブータで終わる名詞に接尾型代名詞がつく場合、ター・マルブータ( ة )はター・マフトゥーハ( ت 1に変わります。

(例) كَلْبَةُ هَا (彼女の牝犬)→ كَلْبَتُهَا

*接尾型代名詞がついた名詞は自由に格変化します。即ち、文中の機能に応じて語尾が変わります。

(例1) كَلْبَتُهَا بَيْضَاءُ 彼女の牝犬は白いです。[主格]

(例2) زَيْنَبُ مَعَ كَلْبَتِهَا ザイナブは彼女の牝犬と一緒にいます。[所有格]

(例3) لَكِنَّ ذَنَبَهُ أَبْيَضُ しかし、その尻尾は白いです。[対格]

*最後に、接尾型代名詞は、(長母音、短母音を問わず)母音 [i] に先行された場合、発音が هِ に変わることに注意してください。

(例1) فَمُهُ صَغِيرٌ 彼の口は小さいです。

(例2) فِي فَمِهِ كُرَةٌ 彼の口にはボールがあります。


1「マルブータ」( مَرْبُوطَة )は「結ばれた」、「マフトゥーハ」( مَفْتُوحَة )は「開かれた」という意味で、いずれも文字の形状に着目した命名です。