第2章 動詞文


1 規則動詞(1)

*アラビア語の動詞の大部分は、3つの語根で構成される3語根動詞です。その3つの語根に、連続した同一の2子音や、 و 及び ي がない動詞を規則動詞といいます。それ以外の動詞は、通常、不規則動詞と呼ばれます1


2 直説法未完了形(1)

*この課で学ぶのは、直説法未完了形の活用です。直説法未完了形は、為され始めた、あるいは為されつつある行為、または状況を示します。

*アラビア語の動詞は人称、数及び性に応じて活用します。数には単数形、双数形及び複数形の区別がありますが、当面は単数形の活用を学んでいきましょう2

*未完了形は3つの語根から作ります。ここでは語根 فعل から、規則動詞の例として、 فَعَلَ (する)を活用させてみましょう。

先頭に、その活用形固有の《活用接頭辞》を立てます。単数形の場合、三人称男性形が يَ で、女性形が تَ です。二人称は男性形も女性形も تَ です。また、一人称は男女共通で أَ です。

第1語根の母音をスクーンに変えます。

第2語根の母音を、慣用によって定まっている、その動詞固有の《未完了形の特徴母音》に変えます。 فَعَلَ (する)の場合、未完了形の特徴母音は [a] ですから、この場合は عَ と続けます。

第3語根以下の処理は、活用形に応じて異なります。大部分の活用形では第3語根の母音をダンマ( [u] 音)に変えるだけですが、一部の活用形においては、第3語根の母音を変えた後、特定の《活用接尾辞》を加えます。単数形では二人称女性形の場合、第3語根の母音をカスラ( [i] 音)に変えて、更に活用接尾辞 ِينَ - を加えます。


*まとめると、以下のような表になります。


人称

活用形


接尾辞

第3語根

第2語根

第1語根

接頭辞


三人称

男性形

يَفْعَلُ

女性形

تَفْعَلُ


二人称

男性形

تَفْعَلُ


لُ




عَ




فْ

يَ

女性形

تَفْعَلِينَ


لُ

تَ

一人称

男女共通

أَفْعَلُ


لُ

تَ

ينَ

لِ

تَ


لُ

أَ


*なお、未完了形では、三人称女性単数形と二人称男性単数形は常に同型になります。


3 未完了形の特徴母音

*規則動詞はすべて、これと同様な活用をします。ただ、語によって第2語根の母音が変わるだけです。第2語根が [u] [a] [i] のうちどの母音をとるかは慣用によって定まっていますが、辞書や語彙集を見れば、《見出し語》の脇に示されています。

*動詞の見出し語とは、最も単純で最も語根に近い形、即ち第13課で学ぶ完了形の三人称単数男性形のことです。たとえば語根 فعل の完了形の三人称単数男性形は فَعَلَ です。 فَعَلَ は字義通りには「彼はした」という意味ですが、アラビア語には不定詞がないので、辞書では慣習的にこの形で何の動詞かを示しています。

(例) فَعَلَ [a] する/ كَتَبَ [u] 書く/ قَرَأَ [a] 読む/ عَرَفَ [i] 知る

*では、この課に出てくる動詞のいくつかを未完了形に活用させてみましょう。二人称単数女性形の場合だけ、活用接尾辞の ِينَ - を加えることに注意してください。


人称

كَتَبَ [u]

رَفَعَ [a]

عَرَفَ [i]


سَأَلَ [a]

قَرَأَ [a]


三人称

男性形

يَكْتُبُ

يَرْفَعُ

يَعْرِفُ


يَسْأَلُ

يَقْرَأُ

女性形

تَكْتُبُ

تَرْفَعُ

تَعْرِفُ


تَسْأَلُ

تَقْرَأُ


二人称

男性形

تَكْتُبُ

تَرْفَعُ

تَعْرِفُ


تَسْأَلُ

تَقْرَأُ

女性形

تَكْتُبِينَ

تَرْفَعِينَ

تَعْرِفِينَ


تَسْأَلِينَ

تَقْرَئِينَ

一人称

男女共通

أَكْتُبُ

أَرْفَعُ

أَعْرِفُ


أَسْأَلُ

أَقْرَأُ


4 ハムザ動詞

*3つの語根の一つがハムザの動詞を《ハムザ動詞》といいます。ハムザ動詞は、ある状況下でハムザの書き方が変わるだけで、活用は規則動詞と全く同型です。

*ハムザ動詞はハムザの位置によって、語頭ハムザ動詞、語中ハムザ動詞、語末ハムザ動詞に分類されますが、この課には語中ハムザ動詞の سَأَلَ(尋ねる)と、語末ハムザ動詞の قَرَأَ (読む)が出ています。

*ハムザは通常アリフの台に書かれますが、直前の母音と自身の母音の組み合わせによって、台が変わる場合があります。たとえば語末ハムザ動詞の قَرَأَ (読む)の場合、未完了形の二人称単数女性形でハムザの台が ئ に変わっていますが、これは第3語根のハムザが母音 [i] を持つためです。このように母音 [i] を持つハムザは常に ئ の台に書かれます。

(例) تَقْرَأُ كِتَابًا 貴男は本を読んでいます。/ تَقْرَئِينَ كِتَابًا 貴女は本を読んでいます。


5 直接目的語

*動詞の直接目的語は対格に置かれます。

(例1) أَكْتُبُ رِسَالَةً 私は手紙を書きます。

(例2) يَرْسُمُ الزَّهْرَةَ وَالكَأْسَ 彼は花とコップを描きます。


6 動詞の位置

*動詞は主語の前に来ることも、後ろに来ることもできます。

(例1) يَرْفَعُ نَذِيرٌ رَأْسَهُ ナジールは彼の頭を上げます。

(例2) نَذِِيرٌ يَرْفَعُ رَأْسَهُ ナジールは彼の頭を上げます。

*原則として、動詞は文頭に置く方がよいでしょう。ただし、主語が文法的に限定されていない時は、主語は必ず動詞の後ろに置かなければなりません。なお、アラビア語の文法では、「動詞文とは動詞で始まる文である」と定義されています。


7 否定詞 لاَ

*直説法未完了形の否定文で最も多く用いられる否定詞は لاَ です。

(例) هَلْ تَعْرِفُ آمِنَةَ ؟ あなたはアーミナを知っていますか。

لاَ ، أَنَا لاَ أَعْرِفُ صَاحِبَتَكِ آمِنَةَ いいえ、私は貴女の友だちのアーミナを知りません。

*上の例文には二つの لاَ がありますが、二つ目の لاَ が否定詞の لاَ です。一つ目の لاَ は質問に対して「はい」「いいえ」を答えるための応答詞の لاَ ですから、両者を混同しないように注意してください。

1なお、「不規則」動詞というのは、いささか不適切な命名と言えましょう。というのも、アラビア語の動詞は、以下に展開されるように、すべて一定の規則に基づいて整然と活用するからです。

2双数形は第21課、複数形は第23課以降で学びます。