◆1 くぼみ動詞(2)

*第15課では第2語根が و のくぼみ動詞のうち、未完了形の特徴母音として [u] をとる فَعَلَ 型くぼみ動詞を学びました。この課では残りの3つの型の活用を学びます。


◆2 くぼみ動詞の活用(2)

*既に第15課で述べたように、第2語根が ي のくぼみ動詞には فَعَلَ 型と فَعِلَ 型があります。この課には前者の例が2つ出ていますが、この型のくぼみ動詞はすべて、未完了形の特徴母音として [i] をとります。

(例1) عَاشَ [Ai] 生きる、生活する[語根は عيش

(例2) غَابَ [Ai] 欠席する、不在である[語根は غيب

*では、 عَاشَ を例にとり、その単数形の活用をみていきましょう。

<1>完了形の活用

①第3語根が母音を持つ人称(=三人称単数男性形及び三人称単数女性形)では、第2語根の ي は長母音 [a:] を示すアリフに転化します。

(例)完了形の三人称単数男性形: عَاشَ عَيَشَ

②それ以外の第3語根がスクーンの人称では、第2語根の ي は除去されますが、もともとは第2語根が يَ であった痕跡を残すために、第1語根の母音を強制的に [i] に転化させます。

(例)完了形の二人称単数男性形: عِشْتَ عَيَشْتَ


最終形


中間形


理論形

人称

活用形

接尾

第3

第2

第1

接頭

接尾

第3

第2

第1

接頭

三単男

S

عَاشَ


شَ

ا

عَ



شَ

يَ

عَ


三単女

S

عَاشَتْ

تْ

شَ

ا

عَ


تْ

شَ

يَ

عَ


二単男

C

عِشْتَ

تَ

شْ

>

عِ


تَ

شْ

يَ

عَ


二単女

C

عِشْتِ

تِ

شْ

>

عِ


تِ

شْ

يَ

عَ


一単

C

عِشْتُ

تُ

شْ

>

عِ


تُ

شْ

يَ

عَ



<2>未完了形の活用

③第1語根がスクーンで、かつ第3語根が母音を持つ人称では、第2語根の母音 [i] は第1語根に引き渡され、第2語根は単に長母音 [i:] を示すヤーウに転化します。

(例)未完了形の三人称単数男性形: يَعِيشُ يَعْيِشُ


最終形


中間形


理論形

人称

活用形

接尾

第3

第2

第1

接頭

接尾

第3

第2

第1

接頭

三単男

S

يَعِيشُ


شُ

ي

عِ

يَ


شُ

يِ

عْ

يَ

三単女

S

تَعِيشُ


شُ

ي

عِ

تَ


شُ

يِ

عْ

تَ

二単男

S

تَعِيشُ


شُ

ي

عِ

تَ


شُ

يِ

عْ

تَ

二単女

L

تَعِيشِينَ

ينَ

شِ

ي

عِ

تَ

ينَ

شِ

يِ

عْ

تَ

一単

S

أَعِيشُ


شُ

ي

عِ

أَ


شُ

يِ

عْ

أَ


◆3 くぼみ動詞の活用(3)

*次に、 فَعِلَ 型くぼみ動詞の活用を学びましょう。

*既に第15課で述べたように、 فَعِلَ 型くぼみ動詞には第2語根が و のものと ي のものがありますが、 فَعِلَ 型の動詞は常に、未完了形の特徴母音として [a] をとります。

(例1) خَافَ [Ia] 怖れる、怖い[語根は خوف

(例2) نَامَ [Ia] 眠る[語根は نوم

*では、 خَافَ を例にとり、その単数形の活用をみていきましょう。

<1>完了形の活用

①第3語根が母音を持つ人称では、第2語根の و は長母音 [a:] を示すアリフに転化します。

(例)完了形の三人称単数男性形: خَافَ خَوِفَ

②それ以外の第3語根がスクーンの人称では、第2語根の و は除去されますが、もともとは第2語根が وِ であった痕跡を残すために、第1語根の母音を強制的に [i] に転化させます。

(例)完了形の二人称単数男性形: خِفْتَ خَوِفْتَ

最終形


中間形


理論形

人称

活用形

接尾

第3

第2

第1

接頭

接尾

第3

第2

第1

接頭

三単男

S

خَافَ


فَ

ا

خَ



فَ

وِ

خَ


三単女

S

خَافَتْ

تْ

فَ

ا

خَ


تْ

فَ

وِ

خَ


二単男

C

خِفْتَ

تَ

فْ

>

خِ


تَ

فْ

وِ

خَ


二単女

C

خِفْتِ

تِ

فْ

>

خِ


تِ

فْ

وِ

خَ


一単

C

خِفْتُ

تُ

فْ

>

خِ


تُ

فْ

وِ

خَ



<2>未完了形の活用

③第1語根がスクーンで、かつ第3語根が母音を持つ人称では、第2語根の母音 [a] は第1語根に引き渡され、第2語根は長母音 [a:] を示すアリフに転化します。

(例)未完了形の三人称単数男性形: يَخَافُ يَخْوَفُ


最終形


中間形


理論形

人称

活用形

接尾

第3

第2

第1

接頭

接尾

第3

第2

第1

接頭

三単男

S

يَخَافُ


فُ

ا

خَ

يَ


فُ

وَ

خْ

يَ

三単女

S

تَخَافُ


فُ

ا

خَ

تَ


فُ

وَ

خْ

تَ

二単男

S

تَخَافُ


فُ

ا

خَ

تَ


فُ

وَ

خْ

تَ

二単女

L

تَفَافِينَ

ينَ

فِ

ا

خَ

تَ

ينَ

فِ

وَ

خْ

تَ

一単

S

أَخَافُ


فُ

ا

خَ

أَ


فُ

وَ

خْ

أَ


*なお、この課に出ているのは第2語根が و فَعِلَ 型くぼみ動詞だけですが、少数ながら、第2語根が ي فَعِلَ 型くぼみ動詞もあります。

(例) هَابَ [Ia] 畏怖する、畏れる[語根は هيب

*ただし、第2語根が و であれ ي であれ、活用の型としては全く同一なので、活用表は省略します。


◆4 くぼみ動詞活用のまとめ

*第15課と第16課で、4つのくぼみ動詞の活用の型を学びました。まとめると、以下のようになります。


第2語根

一般式

完3単男

完2単男

特母

未3単男


و

A

فَعَلَ

سَاقَ

سُقْتَ

u

يَسُوقُ

I

فَعِلَ

خَافَ

خِفْتَ

a

يَخَافُ


ي

A

فَعَلَ

عَاشَ

عِشْتَ

i

يَعِيشُ

I

فَعِلَ

هَابَ

هِبْتَ

a

يَهَابُ


◆5 従位接続詞 أَنَّ

*この語は名詞節を導く従位接続詞で、強制対格語です。「話す」「語る」「断言する」「思う」「信じる」「仮定する」「知る」「主張する」などの意味を表す動詞の後に用いられます。

(例) فَحَسِبَ الفَأْرُ أَنَّهُ غَائِبٌ そこでネズミは猫がいないと思いました。


◆6 فَعِلَ 型の動詞の例外

*先ほど「 فَعِلَ 型の動詞は常に、未完了形の特徴母音として [a] をとります」と述べましたが、一つだけ例外があります。上の例文で用いられている規則動詞 حَسِبَ [Ii](思う、考える)がまさにその例外にあたります。この動詞だけは、完了形の第2語根の母音が [i] であるにもかかわらず、未完了形の特徴母音として例外的に [i] をとります1

*なお、語根 حسب には他に فَعَلَ 型の動詞 حَسَبَ [Au](数える、計算する)がありますが、この動詞の場合は未完了形の特徴母音として [u] をとります。


◆7 能動分詞(5)

*この課には、くぼみ動詞の能動分詞 غَائِبٌ (不在の)が出ていますが、この語は動詞 غَابَ [Yi](不在である、欠席する)から派生したものです。既に第15課で学んだように、くぼみ動詞の能動分詞は第2語根がハムザに変わります。なお、次の2語は、能動分詞の名詞用法の例です。

(例1) سَاقَ [Wu] 運転する→ سَائِقٌ 常習的に運転する人→運転手

(例2) طَارَ [Yi] 飛ぶ→ طَائِرٌ 常習的に飛ぶもの→鳥、小鳥


◆8 等位接続詞 فَ

*この接続詞は原則的に、原因と結果の関係にある2つの文を結びます。

(例) كَمَنَ القِطُّ فِي سَلَّةٍ فَحَسِبَ الفَأْرُ أَنَّهُ غَائِبٌ

ネズミは籠の中に隠れました。そこでネズミは猫がいないと考えました。

*一般的にアラブ人は句点(ピリオド)で文を切るよりも、 وَ فَ の等位接続詞で文を続けることを好みます。この課の最後の数文を見れば、そのことがよくわかるでしょう。

*また、接続詞 أَمَّا(〜に関して言えば)で始まる文では、応答文は必ず فَ で受けなければなりません。ただし、この場合、 فَ は強いて訳出するには及びません。

(例) أَمَّا الفَأْرُ فَيَعِيشُ فِي شَقٍّ ネズミは[と言えば]隙間に住んでいます。


9 語頭ハムザ動詞

*既に私たちは第11課で سَأَلَ [Aa](尋ねる)と قَرَأَ [Aa](読む)という二つのハムザ動詞を学びました。この課には第1語根がハムザの、語頭ハムザ動詞 أَكَلَ [Au](食べる)が出ています。

(例) لَكِنَّ الفَأْرَ هَرَبَ فَدَخَلَ الشَّقَّ فَمَا أَكَلَهُ القِطُّ

しかしネズミは逃げて穴に入ったので、猫はネズミを食べられませんでした

*語頭ハムザ動詞の活用に関して特に変わった点はありませんが、未完了形の一人称単数形では、活用接頭辞のアリフと第1語根のアリフが連続するため、両者が合体してマッダ記号( آ )に変わることに注意してください。

(例)私は食べる: أَأْكُلُ [理論形]→ آكُلُ


1 なお、語根 حسب には他に فَعَلَ 型の動詞 حَسَبَ [Au](数える、計算する)がありますが、この動詞の場合は未完了形の特徴母音として [u] をとります。