◆1 基数詞
*数の1は通常明示されません。その名詞が単数形の非限定相であることで代用されます。
(例) دِينَارٌ 一ディナール
*単に数の1を言う時には أَحَدٌ (男性形)/ إِحْدَى (女性形)を用います。
*数の2も同様に明示されず、その名詞が双数形であることで代用されます。
(例) دِينَارَانِ 二ディナール
*単に数の2を言う時には اِثْنَانِ (男性形)/ اِثْنَتَانِ (女性形)を用います。
*この2語の語頭のアリフは一時性のアリフです。また、この2語は双数形と同型の活用をします。
(例) اِثْنَانِ [主格]/ اِثْنَيْنِ [所有格・対格]
*3から10までの基数詞は通常とは逆に、男性形でター・マルブータを取り、女性形でター・マルブータを取りません。
数 |
男性形 |
女性形 |
1 |
أَحَدٌ |
إِحْدَى |
2 |
اِثْنَانِ |
اِثْنَتَانِ |
3 |
ثَلاَثَةٌ |
ثَلاَثٌ |
4 |
أَرْبَعَةٌ |
أَرْبَعٌ |
5 |
خَمْسَةٌ |
خَمْسٌ |
6 |
سِتَّةٌ |
سِتٌ |
7 |
سَبْعَةٌ |
سَبْعٌ |
8 |
ثَمَانِيَةٌ |
ثَمَانٍ |
9 |
تِسْعَةٌ |
تِسْعٌ |
10 |
عَشَرَةٌ |
عَشْرٌ |
◆2 数詞句の構成
*3から10までの基数詞は形容詞ではなく、名詞として扱われます。即ち、文中の機能に応じて基数詞は様々な格に置かれますが、数えられる対象の名詞はその補語として、常に所有格に置かれます1。
*また、基数詞の性は、数えられる対象の名詞の単数形の性と一致させます。では、いくつか例を見てみましょう。
(例1) فِي الكِيلُو ثَمَانِي مَوْزَاتٍ 一キロにはバナナが8本あります。
*この文では基数詞の ثَمَانِي は数えられる対象の名詞 مَوْزَةٌ (一本のバナナ)の性に合わせて女性形を取り、また文の主語として主格におかれています。文字通りには「1キロにはバナナの8がある」という構文になります。なお、基数詞8の女性形の ثَمَانٍ は、第26課で学んだ「弱動詞の能動分詞型」の活用をします。
(例2) يَدْفَعُ عَشَرَةَ دَنَانِيرَ 彼は10ディナール払います。
*この文では、基数詞の عَشَرَةَ は数えられる対象の名詞 دِينَارٌ (一ディナール)の性に合わせて男性形を取り、また動詞 يَدْفَعُ (払う)の直接目的格補語として対格におかれています。文字通りには「彼はディナールの10を払う」という構文になります。
(例3) الكِيلُو مِنَ التُّفَاحِ بِسِتَّةِ دَنَانِيرَ リンゴ1キロは6ディナールです。
*この文では、基数詞の سِتَّةِ は数えられる対象の名詞 دِينَارٌ (一ディナール)の性に合わせて男性形を取り、また前置詞 بِ に先行されているため所有格におかれています。文字通りには「リンゴの1キロはディナールの6である」という構文になります。
◆3 集合名詞(1)
*集合名詞は動物や植物などの種を示す語で、形態的には単数形ですが、意味的には複数概念を表します。
*集合名詞は、たとえば「私はリンゴが好きだ」というように、種一般を示すために用いられます。一方、複数形は、たとえば「私は庭からリンゴを数個取ってこよう」というように、複数個の実体概念を示すために用いられます。
(例1) تُفَّاحٌ (集合名詞:リンゴ一般)
(例2) تُفَّاحَاتٌ (複数形:数個のリンゴ)
*集合名詞の個体名詞は、語末にター・マルブータをつければ得られます。この個体名詞は単数の女性名詞として扱われます
(例1) مَوْزٌ (集合名詞:バナナ一般)
(例2) مَوْزَةٌ (個体名詞:一本のバナナ)
(例3) مَوْزَاتٌ (複数形:数本のバナナ)
*集合名詞は同一の語根から派生した個体名詞を持つ場合、単数の男性名詞として扱われます2。
(例) المَوْزُ غَالٍ バナナは高い。[集合名詞:単数の男性名詞]
◆4 内部複数形(3)
*この課には、2つの新しい音型の内部複数形が出ています。
⑬ فَوَاعِلُ 型
(例) فَوَاكِهُ → فَاكِهَةٌ 果物
⑭ فُعَّالٌ 型
(例) تُجَّارٌ → تَاجِرٌ 商人
*⑬の فَوَاعِلُ 型は四音節複数形で、二段変化します。
*⑭の فُعَّالٌ 型は、能動分詞の名詞用法の複数形がとる音型です。単数形の تَاجِرٌ は、動詞 تَجَرَ [Au](商業に従事する)の能動分詞です。
◆5 複合名詞 عَبْدُ اللَّهِ
*この語は2つの名詞で構成されています。文字通りには「神の僕」という意味です。
*既に述べたように、複合名詞の後続語は先行名詞の補語として常に所有格に置かれますが、冒頭語は文中の機能に応じて格が変化します。
(例1) أَنَا عَبْدُ اللَّهِ 私はアブドッラーです。[主格]
(例2) أَعْرِفُ عَبْدَ اللَّهِ 私はアブドッラーを知っています。[対格]
(例3) مَعَ عَبْدِ اللَّهِ アブドッラーといっしょに[所有格]
◆6 道具名詞 مِيزَانٌ
*この語は、同化動詞 وَزَنَ [Ai](量る)の道具名詞で、「秤」という意味です。原型は مِوْزَانٌ ですが、アラビア語には [iw] という音節が存在しないため、 و が ي に転化して、長母音 [i:] の音節に変わっています。
*なお、複数形の مَوَازِينُ では第1語根の و が再び現れます。
1通常はこのように「基数詞+名詞の所有格」という構成をとりますが、 رِجَالٌ ثَالِثَةٌ(三人の男)のように名詞の直後に数詞を同格語として続ける方法もあります。特に、数えられる対象が名詞句の場合には、ثَمَنُ الإِطَارَاتِ الأَرْبَعَةِ (四本のタイヤの値段)のように、後者が多用されます。
2同一の語根から派生した個体名詞を持たない場合は、女性名詞として扱われます。これについては第28課で学びます。