1 集合名詞(2)

*名詞 غَنَمٌ は「羊」を意味する集合名詞ですが、この語には同一の語根から派生した個体名詞がありません。従って、実体として「一頭の羊」あるいは「複数頭の羊」を指したい場合は、別の語根から派生した個体名詞、あるいはその複数形を用いなければなりません。

(例) خَرُوفٌ (複数頭の)羊

*既に第27課で述べたように、集合名詞が同一の語根から派生した個体名詞を持つ場合は男性単数名詞として扱われますが、同一の語根から派生した個体名詞を持たない場合は逆に、女性単数名詞として扱われます1

(例) الغَنَمُ غَالِيَةٌ 羊は高い


2 関連詞

غَنَمِيٌّ(羊の)は集合名詞 غَنَمٌ に接尾辞 ِيٌّ を添えることによって得られた関連詞(ニスバ)です。この接尾辞 ِيٌّ は非常によく用いられます。

(例) لَحْمٌ غَنَمِيٌّ 羊の肉

*関連詞は女性形でター・マルブータを取ります。また、複数形は男性形・女性形とも外部複数形をとります。

(例1) الجَزَائِرُ アルジェリア

جَزَائِرِيٌّ [一人の]アルジェリア人男性/ جَزَائِرِيَّةٌ [一人の]アルジェリア人女性/ جَزَائِرِيُّونَ [複数の]アルジェリア人男性/ جَزَائِرِيَّاتٌ [複数の]アルジェリア人女性

(例2) تُونِسُ チュニジア

تُونِسِيّ [一人の]チュニジア人男性/ تُونِسِيَّةٌ [一人の]チュニジア人女性/ تُونِسِيُّونَ [複数の]チュニジア人男性/ تُونِسِيَّاتٌ [複数の]チュニジア人女性


3 派生名詞(3)

مَجْزَرَةٌ (肉屋の店)は、動詞 جَزَرَ [Au](殺す、屠殺する)から派生した場所名詞です。

*一方、 جَزَّارٌ (肉屋の主人)は、同じ動詞から派生した職業名詞です。 نَجَّارٌ (大工)や خَيَّاطٌ (仕立屋)と同じ音型です。


4 動詞 كَانَ の用法(2)

*動詞 كَانَ はしばしば他の動詞の助動詞として用いられます。後続の動詞が未完了形の場合、助動詞 كَانَ は過去の継続行為あるいは反復行為を表します。

(例) كُنَّا نَشْرِي اللَّحْمَ مِنَ السُّوقِ 私たちはスークで肉を買っていました。

*なお、助動詞 كَانَ と動詞の間に主語を置くこともできます。その場合、助動詞 كَانَ は「主語に先行する動詞の性一致原則」に従います。一方、動詞は「主語に後続する動詞」として,性数とも主語に一致させます。

(例) كَانَ سُكَّانُ الحَيِّ يَشْرُونَ اللَّحْمَ مِنَ السُّوقِ

横丁の住人たちはスークで肉を買っていました。


5 第3語根が ن または ت の動詞の活用

*前述の例文にあるように、動詞 كَانَ の完了形の一人称複数形は كُنَّا です。これは活用接尾辞の نَا とスクーンになった第3語根の نْ が、第20課で述べた「同一子音の変形規則」に従ってシャッダで統一されものです。

(例) كُنْنَا [中間形]→ كُنَّا

*このような現象は一般に、第3語根がスクーンになる人称で、母音を持つ活用接尾辞冒頭の文字が第3語根と一致する場合に起こります。

*従って、第3語根が ن の動詞では、第3語根がスクーンになり、かつ活用接尾辞が母音を持つ ن で始まる以下の人称で起こります。

<完了形>三人称複数女性形( نَ )/一人称複数形( نَا

<未完了形>三人称複数女性形( نَ )/二人称複数女性形( نَ


完了形

未完了形


単数形

双数形

複数形

単数形

双数形

複数形

3男

كَانَ

كَانَا

كَانُوا

يَكُونُ

يَكُونَانِ

يَكُونُونَ

3女

كَانَتْ

كَانَتَا

كُنَّ *

تَكُونُ

تَكُونَانِ

يَكُنَّ *

2男

كُنْتَ


كُنْتُمَا

كُنْتُمْ

تَكُونُ


تَكُونَانِ

تَكُونُونَ

2女

كُنْتِ

كُنْتُنَّ

تَكُونِينَ

تَكُنَّ *

1共

كُنْتُ

كُنَّا *

كُنَّا *

أَكُونُ

نَكُونُ

نَكُونُ


*同様に、第3語根が ت の動詞では、第3語根がスクーンになり、かつ活用接尾辞が母音を持つ ت で始まる以下の人称で起こります。

<完了形>二人称単数男性形( تَ )/同女性形( تِ )/一人称単数形( تُ )/

二人称双数形( تُمَا )/二人称複数男性形( تُمْ )/同女形( تُنَّ

*以下に例として、くぼみ動詞 مَاتَ [Au](死ぬ)の活用を掲げます。


完了形

未完了形


単数形

双数形

複数形

単数形

双数形

複数形

3男

مَاتَ

مَاتَا

مَاتُوا

يَمُوتُ

يَمُوتَانِ

يَمُوتُونَ

3女

مَاتَتْ

مَاتَتَا

مُتْنَ

تَمُوتُ

تَمُوتَانِ

يَمُتْنَ

2男

مُتَّ *


مُتُّمَا *

مُتُّمْ *

تَمُوتُ


تَمُوتَانِ

تَمُوتُونَ

2女

مُتِّ *

مُتُّنَّ *

تَمُوتِينَ

تَمُتْنَ

1共

مُتُّ *

مُتْنَا

مُتْنَا

أَمُوتُ

نَمُوتُ

نَمُوتُ


*なお、完了形の三人称単数女性形では第3語根が母音を持つために、このような縮合現象は起きません。


6 接続詞 إِذَا

*この接続詞は軽い驚きを表すために用いられます。

(例) يَجْعَلُ قِطْعَةَ اللَّحْمِ عَلَى المِيزَانِ ، فَإِذَا هِيَ تَزِنُ نِصْفَ كِيلُو

彼は一切れの肉を秤に載せます。すると、その重さは半キロです。

*なお、この表現は前置詞 بِ を添えて إِذَا بِ とすることもあります。

1このように同語根の個体名詞を持たない集合名詞は「真性集合名詞」とも呼ばれ、多くの文法書は女性名詞扱いとしています。しかし、現実には男性名詞として扱われる場合が多く、例えば「真性集合名詞」の一つである خَيْلٌ (馬)の用例をインターネットで調べてみると、 خَيْلٌ أَسْوَدُ 3860件、 خَيْلٌ سَوْدَاءُ 315 件という具合です。