◆1 継続表現 مَا زَالَ
*動詞 زَالَ [Ia]はもともと「終わる」「やむ」という意味の自動詞ですが、多くの場合、否定詞とともに用いられて、「依然〜である」「まだ〜している」という継続の意味を表します。その場合、この動詞は كَانَ や لَيْسَ などと同様、状況動詞とみなされ、後続の属詞は対格に置かれます。
(例) مَا زَالَ نَائِمًا 彼はまだ眠っています
*また、属詞のかわりに直説法の未完了形動詞を用いることもできます。
(例) مَا زِلْتُ أَسْكُنُ فِي هَذِهِ الدَّارِ 私はまだこの家に住んでいます。
◆2 動詞 كَانَ の用法(3)
*動詞 كَانَ が未完了形動詞の助動詞として用いられることは既に第28課で述べましたが、
この動詞はまた、完了形動詞の助動詞としても用いられます。この場合、通常 كَانَ の前には副詞 قَدْ が置かれ、全体で過去完了の意味を表します。
(例) كُنْتُ قَدْ دَخَلْتُ المَكْتَبَةَ 私は既に本屋に入っていました。
*なお、主語が كَانَ と動詞の間に置かれた場合の性数一致規則については、第28課を参照してください。
◆3 接続詞 إِذْ
*この接続詞は動詞の前に置かれ、動作や状態の突発性を示します。
(例) زَيْنَبُ جَالِسَةٌ فِي غُرْفَتِهَا إِذْ تَسْمَعُ صَوْتَ الجَرَسِ
ザイナブが自分の部屋に座っていると、突然呼び鈴の音がします。
◆4 関連詞 كُتُبِيٌّ
*この語は名詞 كِتَابٌ (本)の複数形 كُتُبٌ の関連詞(ニスバ)です。
◆5 敬称 الحَاجُّ
*この語は動詞 حَجَّ [Au](巡礼する)の能動分詞です。従って、名詞用法の際には「巡礼者」と訳出することも可能ですが、多くの場合は原語のまま「ハッジ」とするのが無難でしょう。というのも、この語はメッカへの巡礼を成し遂げた人に与えられる尊称で、一生保持されるからです。
◆6 複合名詞 أَبُو بَكْرٍ
*この固有名詞は2つの名詞から構成されています。従って、第27課で述べた عَبْدُ اللَّهِ と同様に、冒頭語は文中の機能に応じて様々に格変化しますが、後続語は所有格に置かれたままです。
(例1) اِسْمُهُ الحَاجُّ أَبُو بَكْرٍ 彼の名前はハッジのアブー・バクルです。[主格]
(例2) مَنْ يَعْرِفُ الحَاجَّ أَبَا بَكْرٍ ؟ 誰かハッジのアブー・バクルを知りませんか。[対格]
(例3) وَصَلْتُ إِلَى دَارِ الحَاجِّ أَبِي بَكْرٍ
私はハッジのアブー・バクルの家に着きました。[所有格]
*名詞 أَبٌ (父)の変化については第26課を参照してください。
*なお、このような複合固有名詞を訳出する時は、格変化に伴う音の変化は無視して、常に「アブー・バクル」とします。
◆7 起動動詞 جَعَلَ
* جَعَلَ は既に学んだように「置く」という意味の他動詞ですが、直説法の未完了形動詞が後続すると、動作の開始を表します。
(例) جَعَلْتُ أَمْشِي 私は歩き始めました。
*同じ意味を表す動詞は他にもあります。動詞 بَدَأَ [Au](始める)はその最も直接的なものでしょう。これらの動詞は《起動動詞》と呼ばれます。
◆8 包括詞 كُلٌّ
*この語は多くの場合他の名詞を後続させて用いますが、後続語の数・相によって微妙にニュアンスが異なります。
*後続語が単数形で非限定相の時は、「それぞれの」「個々の」という意味を表します。
(例) أَدْخُلُ كُلَّ دَارٍ 私は一軒ずつ家に入ります。
また、時や時間を表す名詞が後続すると、「毎〜」という意味を表します。
(例) كُلَّ يَوْمٍ 毎日
*後続語が単数形で限定相の時は、「全ての」という意味を表します。
(例1)كُلُّ الأُسْرَةِ فِي شَطِّ البَحْرِ 家族全てが海岸にいます。
(例2)كُلَّ اليَوْمِ 一日中
*後続語が複数概念を表す非限定相の名詞の時は、「〜ごとに」「〜おきに」という意味を表します。
(例1) فِي كُلِّ سَنَتَيْنِ 二年ごとに
(例2) فِي كُلِّ نِصْفِ سَاعَةٍ 半時間ごとに
*後続語が複数形で限定相の時は、「全員の」「全部の」という意味を表します。
(例) فَرِحَ مُعَلِّمُنَا بِكُلِّ تَلاَمِيذِهِ 私たちの先生は生徒全員に満足しました
*なお、この語は接尾型人称代名詞を後続させて、単数形及び複数形の限定相の名詞と同格にして用いることもできます。
(例) زُرْنَا المَدِينَةَ كُلَّهَا 私たちは町中全てを訪ねました。