◆1 双数形
*名詞、形容詞、分詞などの双数形を作るには、第21課で学んだように、単数形の語末の母音をに変えた後、 انِ (主格)または يْنَ(所有格・対格)の双数形語尾を加えます。
*語末の母音が長母音の [a:] でアリフ・マクスーラで終わっている語の場合は、 ى を ي に変えてから上記の双数形語尾を加えます。
(例1) مُسْتَشْفًى 病院→ مُسْتَشْفَيَانِ [主格]/ مُسْتَشْفَيَيْنِ [所有格・対格]
(例2) أُخْرَى 他の→ أُخْرَيَانِ [主格]/ أُخْرَيَيْنِ [所有格・対格]
*また、アリフで終わっている語の場合は、 ا を و に変えてから双数形語尾を加えます1。
◆2 複数形
*複数形の主要な音型に習熟すると、語根を推測できるようになります。たとえば أَعْمَالٌ という語を前にした時、重要なことは、おそらくこの語の語頭のハムザは接頭辞で、語根は عمل であろうと推測できるようになることです。
*ある語の単数形からその複数形、あるいはその逆に、ある複数形からその単数形を確実に演繹できるような規則はありません。ですから、複数形に習熟するためには、常に辞書や語彙集を参照しなければなりません。
*2つあるいはそれ以上の複数形を持つ語があることに注意してください。たとえば قَمِيصٌ (シャツ)の複数形には、 قُمُصٌ / قُمْصَانٌ / أَقْمِصَةٌ があります。
◆3 外部複数形
*外部複数形をとるのは主に次のような語です。
①能動分詞・受動分詞
(例1) جَالِسُونَ → جَالِسٌ [男性形]/ جَالِسَاتٌ → جَالِسَةٌ [女性形]
(例2) مُعَلِّمُونَ → مُعَلِّمٌ [男性形]/ مُعَلِّمَاتٌ → مُعَلِّمَةٌ [女性形]2
②職業名詞 فَعَّالٌ
(例) خَيَّاطُونَ → خَيَّاطٌ [男性形]/ خَيَّاطَاتٌ → خَيَّاطَةٌ [女性形]
③関連詞(ニスバ)
(例) جَزَائِرِيُّونَ → جَزَائِرِيٌّ [男性形]/ جَزَائِرِيَّاتٌ → جَزَائِرِيَّةٌ [女性形]
*外部複数形の男性形に一人称単数の接尾型代名詞がつくと、複数形語尾の ي と接尾型代名詞の ي が縮合して、3格すべてが同型になります。
(例) مُعَلِّمِيَّ 私の先生たち[3格共通]
◆4 内部複数形
*最もよく用いられる内部複数形は أَفْعَالٌ 型、 فُعُولٌ 型、 فِعَالٌ 型の3つです。
① أَفْعَالٌ 型
(例) أَوْلاَدٌ → وَلَدٌ 子供/ أَقْلاَمٌ → قَلَمٌ ペン/ أَوْرَاقٌ → وَرَقَةٌ 紙・葉/ أَبْوَابٌ → بَابٌ ドア3
② فُعُولٌ 型
(例) دُرُوسٌ → دَرْسٌ 勉強/ عُيُونٌ → عَيْنٌ 目/ صُحُونٌ → صَحْنٌ 皿
③ فِعَالٌ 型
*この型は3文字の実体名詞、及び فَعِيلٌ 型形容詞の複数形として用いられます。
(例1) رِجَالٌ → رَجُلٌ 男性/ كِلاَبٌ → كَلْبٌ 犬/ جِبَالٌ → جَبَلٌ 山
(例2) كِبَارٌ → كَبِيرٌ 大きい/ صِغَارٌ → صَغِيرٌ 小さい/ سِمَانٌ → سَمِينٌ 太った
*最もよく用いられる四音節複数形は次の5つです。
① مَفَاعِلُ 型
この型は4文字の語4の複数形として用いられます。
(例) مَكَاتِبُ → مَكْتَبٌ 机/ دَفَاتِرُ → دَفْتَرٌ ノート/ مَدَارِسُ → مَدْرَسَةٌ 学校
② فَعَائِلُ 型
この型は第2音節が長母音の語の複数形として用いられます。
(例) رَسَائِلُ → رِسَالَةٌ 手紙/ خَرَائِطُ → خَرِيطَةٌ 地図/ حَقَائِبُ → حَقِيبَةٌ バッグ
③ فَوَاعِلُ 型
この型は第1音節が長母音 [a:] の語の複数形として用いられます。
(例) نَوَافِذُ → نَافِذَةٌ 窓/ شَوَارِعُ → شَارِعٌ 通り
④ مَفَاعِيلُ 型
この型は第3音節が長母音の語の複数形として用いられます。
(例) تَلاَمِيذُ → تِلْمِيذٌ 生徒/ مَصَابِيحُ → مِصْبَاحٌ ランプ・電灯/ دَكَاكِينُ → دُكَّانٌ 店5
كَرَاسِيُّ → كُرْسِيٌّ 椅子6/ سَرَاوِيلُ → سِرْوَالٌ ズボン
⑤ فَوَاعِيلُ 型
この型は第1音節が長母音 [a:] で、第2音節が長母音の語の複数形として用いられます。
(例) حَوَانِيتُ → حَانُوتٌ 商店
*なお、あらゆる四音節複数形は二段変化することに注意してください。
◆5 動詞複数形の活用
(1)完了形複数形の活用
*三人称男性複数形は原則的に、三人称単数男性形の語末の母音を [u] に変えた後、活用接尾辞 وا を加えます。
(例) ذَهَبُوا → ذَهَبَ
なお、末尾のアリフは純粋に書記上のものです。その動詞が直接目的格補語として接尾型代名詞をとると、このアリフは消えてしまいます。
(例) تَرَكُوا + هَا 彼らはそれを置いた→ تَرَكُوهَا
*三人称女性複数形は、活用接尾辞 َنَ によって一人称複数形と区別されます。
(例) ذَهَبْنَ → ذَهَبَ
*二人称及び一人称の複数形は、どのような型の動詞であれ、それぞれの単数形の活用接尾辞を次のように変えるだけです。
(例) ذَهَبْتُمْ → ذَهَبْتُ [二人称複数男性形]/ ذَهَبْتُنَّ → ذَهَبْتِ [二人称複数女性形]/ ذَهَبْنَا → ذَهَبْتُ [一人称複数形]
(2)未完了形複数形の活用
*三人称と二人称の男性複数形は、それぞれの単数形に活用接尾辞 ُونَ を加えます。
(例) يَذْهَبُونَ → يَذْهَبُ [三人称複数男性形]/ تَذْهَبُونَ → تَذْهَبُ [二人称複数男性形]
弱動詞の場合は2つの弱文字が衝突するため、文法的により価値の高いもの(この場合は活用接尾辞の弱文字)が保持されます。
(例1) تَبْنُونَ → تَبْنِيونَ あなた方は建てる
(例2) يَبْقَوْنَ → يَبْقَيُونَ 彼らは留まる
*三人称と二人称の女性複数形は、それぞれの男性単数形の第3語根の母音を取り去った後に、活用接尾辞の نَ を加えます。
(例) يَذْهَبْنَ → يَذْهَبُ [三人称複数女性形]/ تَذْهَبْنَ → تَذْهَبُ [二人称複数女性形]
この二つの人称では第3語根がスクーンになるため、くぼみ動詞の場合、第2語根は除去されます。これは、スクーンの前では長母音が維持できないからです。
(例1) يَقْوُلْنَ[理論形]→ يَقُولْنَ [中間形]→ يَقُلْنَ 彼女たちは言う
(例2) يَزْوُرْنَ[理論形]→ يَزُورْنَ [中間形]→ يَزُرْنَ 彼女たちは訪ねる
*一人称複数形は、活用接頭辞 َنَ によって一人称単数形と区別されます。
(例) نَذْهَبُ → أَذْهَبُ
*なお、動物や物などの《理性を持たない存在》の複数形が主語になった文では、その動詞は主語に先行するか否かにかかわらず、多くの場合、三人称単数女性形に置かれることに注意してください。
(例1) القِطَاطُ تَخَافُ مِنَ الكِلاَبِ 猫たちは犬たちを怖れます。
(例2) تَخَافُ القِطَاطُ مِنَ الكِلاَبِ 猫たちは犬たちを怖れます。
*また、「理性を持たない存在」の複数形が単数女性形として扱われるという規則は、関連する語(属詞、付加形容詞、分離型及び接尾型代名詞、指事代名詞及び指事形容詞、関係代名詞など)にも及びます。
(例) هَذِهِ الأَزْهَارُ جَمِيلَةٌ これらの花はきれいです。
◆6 弱動詞の能動分詞型活用
*この活用型はよく「 قَاضٍ 型活用」と呼ばれます。 قَاضٍ (法官)は弱動詞 قَضَى [Ai](裁く)の能動分詞で、次のように活用します。
弱動詞の能動分詞型活用(再)
|
主格 |
所有格 |
対格 |
非限定相 |
قَاضٍ |
قَاضٍ |
قَاضِيًا |
冠詞限定相 |
القَاضِي |
القَاضِي |
القَاضِيَ |
補語名詞限定相 |
قَاضِي المَدِينَةِ |
قَاضِي المَدِينَةِ |
قَاضِيَ المَدِينَةِ |
代名詞限定相 |
قَاضِينَا |
قَاضِينَا |
قَاضِيَنَا |
◆7 派生語
語根から派生した語は、次のいずれかに分類されます。
(1)動名詞
*第15課で述べたように、動名詞はもとの動詞が含意する行為、心情、状況などを、動詞の時制やその主語、目的語などには何ら関知することなく表します。動名詞には多くの音型がありますが、次の2つはよく用いられる音型です。
*一回性の動作を示す動詞の動名詞は、多くの場合 فَعْلٌ 型をとります。
(例1) رَسَمَ [Au]描く→ رَسْمٌ 描写
(例2) غَسَلَ [Ai]洗う→ غَسْلٌ 洗濯
(例3) سَاقَ [Au]運転する→ سَوْقٌ 運転
(例4) أَكَلَ [Au]食べる→ أَكْلٌ 摂食
(例5) فَتَحَ [Aa]開ける→ فَتْحٌ 開放
(例6) مَشَى [Ai]歩く→ مَشْيٌ 歩行
*空間的な移動を示す動詞の動名詞は、多くの場合 فُعُولٌ 型をとります。
(例1) دَخَلَ [Au]入る→ دُخُولٌ 入ること
(例2) خَرَجَ [Au]出る→ خُرُوجٌ 出ること
(例3) نَزَلَ [Ai]降りる→ نُزُولٌ 降りること
(例4) رَجَعَ [Ai]戻る→ رُجُوعٌ 戻ること
(例5) جَلَسَ [Ai]座る→ جُلُوسٌ 着席
(2)能動分詞
*基本形動詞では、能動分詞は فَاعِلٌ 型(女性形は فَاعِلَةٌ 型)をとります。
(例) خَرَجَ [Ai]出る→ خَارِجٌ 出ている
*ダブル動詞の場合、第2語根と第3語根はシャッダで統合されます。
(例) حَجَّ [Au] 巡礼に出る→ حَاجِجٌ[中間形]→ حَاجٌّ 巡礼/ハッジ
*くぼみ動詞の場合、第2語根はハムザに転化します。
(例) بَاعَ [Ai] 売る→ بَايِعٌ[中間形]→ بَائِعٌ 売っている/売り子
*弱動詞の場合は、6で述べた قَاضٍ 型活用をとります。
(例) شَرَى [Ai] 買う→ شَارِيٌ[中間形]→ شَارٍ 購入/買い手
(3)受動分詞
*基本形動詞では、受動分詞は مَفْعُولٌ 型(女性形は مَفْعُولَةٌ 型)をとります。
(例1) جَمَعَ [Aa] 集める→ مَجْمُوعٌ 集められた/全体、合計
(例2) شَرِبَ [Ia] 飲む→ مَشْرُوبٌ 飲まれた/飲み物
(4)形容詞
*形容詞は多くの場合能動分詞の意味を持ちますが、受動分詞の意味を持つこともあります。
*第3課で学んだように、形容詞の最も典型的な音型は فَعِيلٌ です。
(例1) كَبُرَ [Uu]大きい、年をとる→ كَبِيرٌ 大きい、年とった
(例2) صَغُرَ [Uu]小さい、若い→ صَغِيرٌ 小さい、若い
(5)職業名詞
*職業名詞は فَعَّالٌ 型をとります。
(例1) نَجَرَ [Au]鉋をかける→ نَجَّارٌ 大工
(例2) خَاطَ [Ai]縫う→ خَيَّاطٌ 裁縫師
(例3) جَزَرَ [Ai]屠殺する→ جَزَّارٌ 肉屋
(6)時間名詞・場所名詞
*時間名詞・場所名詞は مَفْعَلٌ 型、 مَفْعِلٌ 型、もしくは مَفْعَلَةٌ 型をとります。
(例1) كَتَبَ [Au]書く→ مَكْتَبٌ 机
(例2) نَزَلَ [Ai]降りる・住む→ مَنْزِلٌ 家
(例3) دَرَسَ [Au]学ぶ→ مَدْرَسَةٌ 学校
(7)道具名詞
*道具名詞は مِفْعَلٌ 型、 مِفْعَلَةٌ 型、もしくは مِفْعَالٌ 型をとります。
(例1) نَجَرَ [Au]鉋をかける→ مِنْجَرٌ 鉋
(例2) سَطَرَ [Au]線を引く→ مِسْطَرَةٌ 定規
(例3) وَزَنَ [Ai] 量る→ مِوْزَانٌ[中間形]→ مِيزَانٌ 秤
1厳密に言えば、語末のアリフが双数形で و に転化するのは、もともとそのアリフが語根の و だった場合に限られます。たとえば عَصًا (杖)は語根が عصو なので、双数形は理論的には عَصَوَانِ になります(アラビア語文典上p271)。しかし、インターネットで調べてみると、この規則が常に守られているわけではなく、現在ではむしろ عَصَيَانِ の方が優勢のようです。なお、それ以外の語の場合は、語末のアリフを ت に変えてから双数形の語尾をつけます。たとえば جُغْرَافِيَا (地理学)や أَلْمَانِيَا (ドイツ)の双数形はそれぞれ جُغْرَافِيَتَانِ と أَلْمَانِيَتَانِ になります。
2 مُعَلِّمٌ と مُعَلِّمَةٌ は第2巻で学ぶ第2形動詞 عَلَّمَ (教える)の能動分詞の男性形と女性形です。「先生」という意味はそこから由来しています。
3この語の語根は بوب です。
4この場合、ター・マルブータは文字として数えません。
5 دُكَّانٌ は دُكْكَانٌ と考えます。
6 كُرْسِيٌّ は كُرْسِييٌ と、 كَرَاسِيُّ は كَرَاسِييُ と考えます。