1 四語根動詞

*アラビア語の動詞の大部分は3つの語根から成る三語根動詞ですが、少数ながら4つの語根から成る動詞もあります。これを《四語根動詞》といいます。

*四語根動詞基本形1の活用は、派生形第4形の活用とよく似ています。なお、活用接尾辞は、完了形でも未完了形でも、三語根動詞と全く同じです。

[7−1]四語根動詞基本形 تَرْجَمَ の活用


完了形

未完了形


単数形

双数形

複数形

単数形

双数形

複数形

3男

تَرْجَمَ

تَرْجَمَا

تَرْجَمُوا

يُتَرْجِمُ

يُتَرْجِمَانِ

يُتَرْجِمُونَ

3女

تَرْجَمَتْ

تَرْجَمَتَا

تَرْجَمْنَ

تُتَرْجِمُ

تُتَرْجِمَانِ

يُتَرْجِمْنَ

2男

تَرْجَمْتَ


تَرْجَمْتُمَا

تَرْجَمْتُمْ

تُتَرْجِمُ


تُتَرْجِمَانِ

تُتَرْجِمُونَ

2女

تَرْجَمْتِ

تَرْجَمْتُنَّ

تُتَرْجِمِينَ

تُتَرْجِمْنَ

1共

تَرْجَمْتُ

تَرْجَمْنَا

تَرْجَمْنَا

أُتَرْجِمُ

نُتَرْجِمُ

نُتَرْجِمُ


(例) هَلْ تُتَرْجِمِينَ لِي كَلاَمَ هَذَا السَّيِّدِ ؟

この方の言葉を私に訳してくれませんか。[未・2単女]


2 くぼみ動詞第2形

*既に第3課で、くぼみ動詞の第2形・第3形・第5形・第6形・第9形では、第2語根の و または ي は強変化すると述べました。この課には、第2語根が و のくぼみ動詞第5形 تَجَوَّلَ (散策する)の例が出ています。

(例) زَيْنَبُ تَتَجَوَّلُ فِي سُوقِ أَبِي سَعَادَةَ

ザイナブはアブー・サアーダの市場を散策しています。[未・3単女]


3 くぼみ動詞第7形

*第7形では一般に、完了形でも未完了形でも、第2語根の直前の音節(=第1語根)は常に短母音 [a] を持ちます( يَنْفَعِلُ - اِنْفَعَلَ )。これは、くぼみ動詞の活用の型を決定する上で、第8形( يَفْتَعِلُ - اِفْتَعَلَ )で第2語根の直前の音節(=接中辞の تَ )が短母音 [a] を持つことと同じ意味を持っています。

*このため、くぼみ動詞の第7形は、第4課で述べた第8形の音韻変化規則と全く同一の、次の規則に従って活用します。

①第2語根の و または ي を挟んで3つの音節がすべて母音を持ち、かつ第1音節(=接中辞 تَ )が短母音 [a] を持つ時は、第2語根の و または ي は長母音 [a:] を示すアリフに転化します。

(例1)完了形の三人称単数男性形: اِنْسَاقَ اِنْسَوَقَ 導かれる

(例2)未完了形の三人称単数男性形: يَنْسَاقُ يَنْسَوِقُ

②第2語根の直前の音節(=接中辞 تَ )が短母音 [a] を持ち、かつ第3語根がスクーンの時は、第2語根の و または ي は除去されます。

(例1)完了形の二人称単数男性形: اِنْسَقْتَ اِنْسَوَقْتَ

(例2)未完了形の三人称複数女性形: يَنْسَقْنَ يَنْسَوِقْنَ

[7−2]くぼみ動詞第7形 اِنْسَاقَ の活用


完了形

未完了形


単数形

双数形

複数形

単数形

双数形

複数形

3男

اِنْسَاقَ

اِنْسَاقَا

اِنْسَاقُوا

يَنْسَاقُ

يَنْسَاقَانِ

يَنْسَاقُونَ

3女

اِنْسَاقَتْ

اِنْسَاقَتَا

اِنْسَقْنَ

تَنْسَاقُ

تَنْسَاقَانِ

يَنْسَقْنَ

2男

اِنْسَقْتَ


اِنْسَقْتُمَا

اِنْسَقْتُمْ

تَنْسَاقُ


تَنْسَاقَانِ

تَنْسَاقُونَ

2女

اِنْسَقْتِ

اِنْسَقْتُنَّ

تَنْسَاقِينَ

تَنْسَقْنَ

1共

اِنْسَقْتُ

اِنْسَقْنَا

اِنْسَقْنَا

أَنْسَاقُ

نَنْسَاقُ

نَنْسَاقُ


4 くぼみ動詞派生形の能動分詞

*くぼみ動詞派生形の能動分詞は音韻の関係で、未完了形の三人称単数男性形から自動的に導くことができます。先頭の子音を م に変えて、語末をタンウィーンにするだけです。

第4形: أَرَلدَ 欲する→ يُرِيدُ 未完未了形]→ مُرِيدٌ

第7形: اِنْسَاقَ 導かれる→ يَنْسَاقُ 未完未了形]→ مُنْسَاقٌ

第8形: اِخْتَارَ 選ぶ→ يَخْتَارُ 未完未了形]→ مُخْتَارٌ

10形: اِسْتَطَاعَ できる→ يَسْتَطِيعُ 未完未了形]→ مُسْتَطِيعٌ


5 くぼみ動詞派生形の動名詞

*くぼみ動詞の派生形の動名詞については、第5課で第4形について述べました。まとめると、以下のようになります。

第2語根が強変化する派生形、即ち第2形・第3形・第5形・第6形・第9形では、第2語根の و または ي は、通常の子音として強変化します。従って、動名詞の作り方は、規則動詞の派生形と同じです。

*それ以外の派生形では、第2語根直前の音節の種別によって決まります。

第2語根直前の音節がスクーンになる派生形、即ち第4形 إِفْعَالٌ と第10 اِسْتِفْعَالٌ では、まず第2語根の母音 [a] が直前の音節(=第1語根)に移動し、第2語根自身は長母音 [a:] を表すアリフに変わります。その結果、不要になったもともとのアリフは消滅し、その痕跡を残すために、語末にター・マルブータを加えます。

(例1) أَقَامَ 起こす→ إِقْوَامٌ 中間形]→ إِقَاامٌ 中間形]→ إِقَامَةٌ [起こすこと]

(例2) اِسْتَرَاحَ 休む→ اِسْتِرْوَاحٌ 中間形]→ اِسْتِرَااحٌ 中間形]→ اِسْتِرَاحَةٌ [休み]

第2語根直前の音節が短母音 [i] を持つ派生形、即ち第7形 اِنْفِعَالٌ と第8形 اِفْتِعَالٌ では、第2語根は直前の短母音 [i] の影響を受けて、たとえ元来が و であっても、強制的に長母音 [i:] を表す ي に変わります。

(例1) اِنْسَاقَ 導かれる→ اِنْسِوَاقٌ 中間形]→ اِنْسِيَاقٌ 導かれること

(例2) اِخْتَارَ 選ぶ→ اِخْتِوَارٌ 中間形]→ اِخْتِيَارٌ 選択

*この結果、②と③の派生形では、動名詞から第2語根の種別を特定できないことになります。


6 弱動詞派生形の能動分詞

*既に第4課で、弱動詞第2形の能動分詞の単数男性形は、直前の短母音 [i] の影響で第3語根の ي が脱落し、その代償として語末がカスラのタンウィーンに変わることを述べました。

(例) غَنَّى 歌う→ مُغَنِّيٌ 中間形]→ مُغَنٍّ [歌手]

*一般に、派生形の能動分詞では第2語根は常に母音 [i] を持ちます。また、既に述べたように、弱動詞の派生形では第3語根はすべて ي に転化します。このため、上記の音韻変化はすべての派生形に適用され、その結果、弱動詞派生形の能動分詞の単数男性形は、次のようにすべての派生形で、語末がカスラのタンウィーンに変わります。

第8形: اِشْتَرَى 買う→ مُشْتَرِيٌ 中間形]→ مُشْتَرٍ

第3形: لاَقَى 出会う→ مُلاَقِيٌ 中間形]→ مُلاَقٍ

第4形: أَعْطَى 与える→ مُعْطِيٌ 中間形]→ مُعْطٍ

第5形: تَغَدَّى 昼食をとる→ مُتَغَدِّيٌ 中間形]→ مُتَغَدٍّ

第6形: تَلاَقَى 互いに出会う→ مُتَلاَقِيٌ 中間形]→ مُتَلاَقٍ

第7形: اِنْحَنَى かがむ→ مُنْحَنِيٌ 中間形]→ مُنْحَنٍ


7 弱動詞派生形の能動分詞の格変化

*能動分詞は当然、格変化をします。既に述べたように、男性単数形はすべて قَاضٍ 型の三段変化をとります。

*男性複数形は外部複数形をとりますが、以下のような音韻変化の過程で第3語根が脱落し、最終的に、主格の語尾はダンマの長母音、所有格・対格の語尾はカスラの長母音になります。

(主格) مُشْتَرٍ [男性単数形]→ مُشْتَرِيُونَ 中間形]→ مُشْتَرُونَ [同複数形]

(所有・対格) مُشْتَرٍ [男性単数形]→ مُشْتَرِيِينَ 中間形]→ مُشْتَرِينَ [同複数形]

*なお、男性双数形及び全ての女性形では、第3語根の ي が復活し、通常の格変化に従います。まとめると、以下のようになります。

[7−3]弱動詞第8形の能動分詞の格変化


男性形

女性形


主格

所有格

対格

主格

所有格

対格

単数形

مُشْتَرٍ

مُشْتَرٍ

مُشْتَرِيًا

مُشْتَرِيَةٌ

مُشْتَرِيَةٍ

مُشْتَرِيَةً

双数形

مُشْتَرِيَانِ

مُشْتَرِيَيْنِ

مُشْتَرِيَتَانِ

مُشْتَرِيَتَيْنِ

複数形

مُشْتَرُونَ

مُشْتَرِينَ

مُشْتَرِيَاتٌ

مُشْتَرِيَاتٍ


8 弱動詞派生形の動名詞(1)

*弱動詞派生形の動名詞については、既に第3課で لِقَاءٌ (出会い)の例を学びました。一般に、弱動詞派生形の動名詞で語形変化を決定するのは、第2語根の母音の種別です。

動名詞の第2語根が長母音 [a:] を持つ場合、即ち第3形の فِعَالٌ 型、第4形 إِفْعَالٌ 、第7形 اِنْفِعَالٌ 、第8形 اِفْتِعَالٌ 及び第10اِسْتِفْعَالٌ では、第3語根の ي は単独ハムザに変わります。

(例1لاَقَى 会う[第3形]→ لِقَاءٌ

(例2أَهْدَى 導く[第4形]→ إِهْدَاءٌ

(例3اِنْحَنَى 傾く[第7形]→ اِنْحِنَاءٌ

(例4اِشْتَرَى 買う[第8形]→ اِشْتِرَاءٌ

動名詞の第2語根が短母音 [u] を持つ派生形、即ち第5形 تَفَعُّلٌ 及び第6形 تَفَاعُلٌ では、第3語根の ي が脱落し、その代償として語末がカスラのタンウィーンに変わります。その結果、最終的に قَاضٍ 型の三段変化をとります。

(例1تَغَدَّى 昼食をとる[第5形]→ تَغَدُّيٌ[中間形]→ تَغَدٍّ

(例2تَلاَقَى 互いに会う[第6形]→ تَلاَقُيٌ[中間形]→ تَلاَقٍ

第2形では、弱動詞の動名詞は常に تَفْعِلَةٌ 型をとります。

(例سَلَّى 慰める→ تَسْلِيَةٌ


9 首弱動詞派生形の活用原則

*既に学んだように、首弱動詞とは、第1語根が و または ي の動詞の総称です。そのうち、第1語根が و で、かつ未完了形で第1語根が脱落するものが同化動詞ですが、同化動詞も派生形では第1語根の و が復活し、通常の首弱動詞として活用します。

*首弱動詞の派生形では、第1語根の و または ي は通常の子音として強変化しますから、ごく一部の例外2を除いて、規則動詞の派生形と同型の活用になります。

*この課には、首弱動詞第3形の動詞 وَافَقَ (同意する)の例が出ています。

(例) لاَ يُوَافِقُكَ عَلَى هَذَا الثَّمَنِ

彼はこの値段ではあなたに同意しません。[未・3単男]

*ただし、第8形だけは、第1語根の و ت に変わり、最終的に接中辞の ت と同化されるため、規則動詞の第8形とは異なる語形になります。

(例) اِوْتَفَقَ [完了形・理論形]→ اِتْتَفَقَ 中間形]→ اِتَّفَقَ 同意する

*この現象はすべての活用変化に及びます。従って、未完了形は يَتَّفِقُ 、能動分詞は→ مُتَّفِقٌ 同、動名詞は اِتِّفَاقٌ となります。

(例) سَنَتَّفِقُ عَلَى سَبْعَةَ عَشَرَ دِينَارًا 我々は17ディナールで手を打ちましょう。[未・1双]


10 数詞

11から19までの数詞は、以下のように作ります。

男性形は1から9までの基本数詞の男性形を対格におき、その後に عَشَرَ を加えます。(例)15の男性形: خَمْسَةَ عَشَرَ

女性形は1から9までの基本数詞の女性形を対格におき、その後に عَشْرَةَ を加えます。(例)15の女性形: خَمْسَ عَشْرَةَ

*第8課で述べる12の場合を除いて、 11から19までの数詞は活用しません。基本数詞も、その後に加えられる عَشَرَ または عَشْرَةَ も常に対格におかれたままで、またタンウィーンをとることもありません。また、11から19までの場合、数えられる対象の名詞は、常に非限定相の単数対格におかれます。

*既に学んだように、数詞の性を決定するのは、数えられる対象の名詞の性です。次の例では、数えられる対象の名詞 دِينَارٌ が男性名詞なので、数詞は男性形が採用されていますが、すべて同型で、格変化していないことに注意してください。

(例1) لاَ تَكْفِينِي خَمْسَةَ عَشَرَ دِينَارًا

私には15ディナールでは十分ではありません。[主格]

(例2) يُعْطِيكَ خَمْسَةَ عَشَرَ دِينَارًا فَقَطْ

彼はあなたに15ディナールしか与えません。[目的格]

(例3) يُرِيدُهُمَا بِخَمْسَةَ عَشَرَ دِينَارًا

彼はその二つを15ディナールでほしがっています。[所有格]


11 活用のまとめ(6)

*この課では四語根動詞の他に、主に弱動詞とくぼみ動詞派生形の能動分詞と動名詞について学びました。弱動詞の派生形にはまだ第10形がありますし、くぼみ動詞の派生形にも第2語根が強変化するものがいくつか残っていますが、弱動詞とくぼみ動詞の派生形の活用に関しては、これでほぼ出揃ったと言えるでしょう。では、これまでの活用をまとめてみましょう。

(2)弱動詞の派生形


意味

完了形

未完了形

能動分詞

動名詞

歌う

Ai

غَنَّى

يُغَنِّي

مُغَنٍّ

*تَغْنِيَة

出会う

Ai

لاَقَى

يُلاَقِي

*مُلاَقٍ

لِقَاءٌ

与える

Ai

أَعْطَى

يُعْطِي

*مُعْطٍ

* اِعْطَاءٌ

昼食を

とる

Aa

تَغَدَّى

يَتَغَدَّى

*مُتَغَدٍّ

*تَغَدٍّ

互いに

会う

Aa

تَلاَقَى

يَتَلاَقَى

*مُتَلاَقٍ

*تَلاَقٍ

かがむ

Ai

اِنْحَنَى

يَنْحَنِي

*مُنْحَنٍ

* اِنْحِنَاءٌ

買う

Ai

اِشْتَرَى

يَشْتَرِي

*مُشْتَرٍ

* اِشْتِرَاءٌ


(3)くぼみ動詞の派生形


意味

完了形

未完了形

能動分詞

動名詞

欲する

أَرَادَ

يُرِيدُ

*مُرِيدٌ

إِرَادَةٌ

*Ⅴ

散策する

تَجَوَّلَ

يَتَجَوَّلُ

مُتَجَوِّلٌ

تَجَوُّلٌ

*Ⅶ

導かれる

اِنْسَاقَ

يَنْسَاقُ

*مُنْسَاقٌ

اِنْسِيَاقٌ

選ぶ

اِخْتَارَ

يَخْتَارُ

*مُخْتَارٌ

*اِخْتِيَارٌ

黒くなる

اِسْوَدَّ

يَسْوَدُّ

مُسْوَدٌّ

اِسْوِدَادٌ

できる

اِسْتَطَاعَ

يَسْتَطِيعُ

*مُسْتَطِيعٌ

*اِسْتِطَاعَةٌ


(4)ダブル動詞の派生形


意味

完了形

未完了形

能動分詞

動名詞

愛する

أَحَبَّ

يُحِبُّ

مُحِبٌّ

إِحْبَابٌ


(5)首弱動詞の派生形


意味

完了形

未完了形

能動分詞

動名詞

告別する3

وَدَّعَ

يُوَدِّعُ

مُوَدِّعٌ

تَوْدِيعٌ

*Ⅲ

同意する

وَافَقَ

يُوَافِقُ

مُوَافِقٌ

مُوَافَقَةٌ

止まる4

تَوَقَّفَ

يَتَوَقَّفُ

مُتَوَقِّفٌ

تَوَقُّفٌ

*Ⅷ

同意する

اِتَّفَقَ

يَتَّفِقُ

مُتَّفِقٌ

اِتِّفَاقٌ




1四語根動詞にも基本形の他に、第2形から第4形までの派生形がありますが、本書では割愛します。

2首弱動詞の特殊な音韻変化については第9課で学びます。

3第6課参照。

4第1課参照。