1 要求法

*直説法、接続法に次いで最もよく用いられる法が要求法1です。この課と次の第14課では、要求法について学びます。

*要求形は接続形から作られますが、一部の不規則動詞の短母音人称群では、語形に規則動詞と多少の違いが生じます。そのため、この課では本則に従う活用に留め、一部の不規則動詞の活用は、第14課で学びます。


2 要求形の作り方

*要求法の語形は、接続法の語形から以下のように作ります。

短母音人称群、即ち、三人称単数男性形・女性形、二人称単数男性形、一人称単数・双数・複数形では、最終音節の母音をファタハからスクーンに変えるだけです。

(例1) أَسْمَعُ 私は聞く[直]→ أَسْمَعَ [接]→ أَسْمَعْ [要]

(例2) نَنْتَظِرُ 我々は待つ[直]→ نَنْتَظِرَ [接]→ نَنْتَظِرْ [要]

長母音人称群、即ち、二人称単数女性形、三人称双数男性形・女性形、二人称双数形、三人称複数男性形、及び二人称複数男性形では、接続法と同型です。つまり、直説法の語形から ن を脱落させます。

(例1) تَكْتُبِينَ 貴女は書く[直]→ تَكْتُبِي [接]→ تَكْتُبِي [要]

(例2) تَطْوُونَ あなた方は折る[直説法]→ تَطْوُوا [接続法]→ تَطْوُوا [要求法]

無母音人称群、即ち、三人称複数女性形と二人称複数女性形では、直説法のままです。つまり、この人称群では3形同型です。

(例) تَشْرَبْنَ 彼女たちは飲む[直]→ تَشْرَبْنَ [接]→ تَشْرَبْنَ [要]


3 要求形の活用(1)

*参考のために、規則動詞・ハムザ動詞・同化動詞の接続法と要求法の活用を掲げます。これらの動詞群では、短母音人称群(S)の語形は、接続形の第3語根の母音をスクーンに変えるだけで得られます。

[13−1]規則動詞 فَعَلَ の要求形


未完了形接続法

未完了形要求法


単数形

双数形

複数形

単数形

双数形

複数形

3男

S

يَفْعَلَ

L

يَفْعَلاَ

L

يَفْعَلُوا

S

يَفْعَلْ

L

يَفْعَلاَ

L

يَفْعَلُوا

3女

S

تَفْعَلَ

L

تَفْعَلاَ

M

يَفْعَلْنَ

S

تَفْعَلْ

L

تَفْعَلاَ

M

يَفْعَلْنَ

2男

S

تَفْعَلَ


L


تَفْعَلاَ

L

تَفْعَلُوا

S

تَفْعَلْ


L


تَفْعَلاَ

L

تَفْعَلُوا

2女

L

تَفْعَلِي

M

تَفْعَلْنَ

L

تَفْعَلِي

M

تَفْعَلْنَ

1共

S

أَفْعَلَ

S

نَفْعَلَ

S

نَفْعَلَ

S

أَفْعَلْ

S

نَفْعَلْ

S

نَفْعَلْ


[13−2]語末ハムザ動詞 قَرَأَ の要求形

完了形

3単男(S)

2単女(L)

3双(L)

3複男(L)

3複女(M)


قَرَأَ

يَقْرَأُ

تَقْرَئِينَ

يَقْرَآنِ

يَقْرَؤُونَ

يَقْرَأْنَ

يَقْرَأَ

تَقْرَئِي

يَقْرَآ

يَقْرَؤُوا

يَقْرَأْنَ

يَقْرَأْ

تَقْرَئِي

يَقْرَآ

يَقْرَؤُوا

يَقْرَأْنَ


[13−3]同化動詞 وَقَفَ の要求形

完了形

3単男(S)

2単女(L)

3双(L)

3複男(L)

3複女(M)


وَقَفَ

يَقِفُ

تَقِفِينَ

يَقِفَانِ

يَقِفُونَ

يَقِفْنَ

يَقِفَ

تَفِقِي

يَقِفَا

يَقِفُوا

يَقِفْنَ

يَقِفْ

تَفِقِي

يَقِفَا

يَقِفُوا

يَقِفْنَ


*いずれの場合も、接続形と語形が異なるのは、短母音人称群(S)だけであることに注意してください。


4 要求法の用法

*《要求法要求詞》と呼ばれる語の後では、自動的に要求法が採用されます。

*最も頻繁に用いられるのは、過去の否定詞の لَمْ です。

(例) لَمْ أَسْمَعْكِ لِأَنِّي كُنْتُ أَتَكَلَّمُ مَعَ زَمِيلِي

私は同僚と話していたのであなたの言葉を聞いていませんでした。[要・1単]

なお、この文は、否定の助動詞 مَا を用いて مَا سَمِعْتُ としても意味は全く変わりませんが、「過去の否定詞 لَمْ +要求法」の方が「否定詞 مَا +直説法完了形」より好まれます。

*二人称に対する否定命令を表す لاَ の後では、要求法が用いられます。これは、後に学ぶ命令法では、二人称に対する肯定命令しか表現できないためです。

(例1) لاَ تَبْعَثِيهَا それを送らないでください。[要・2単女]

(例2) لاَ تَذْهَبِي 行かないでください。[要・2単女]

(例3) لاَ تَطْوُوا 折らないでください。[要・2複男]

なお、この「否定命令の لاَ 」と、応答詞の لاَ (いいえ)を混同しないように注意してください。

*また、三人称及び一人称に対する使役命令を表す لِ の後でも、要求法が用いられます。(例) سَيَرْجِعُ بَعْدَ قَلِيلٍ . لِنَنْتَظِرْهُ مَعًا

彼はまもなく戻るでしょう。だから一緒に待ちましょう。[要・1双]

なお、この لِ と、第11課で学んだ「〜するために」という肯定目的を表す接続詞 لِ を混同しないように注意してください。

(例) أَنَا ذَاهِبَةٌ الآنَ إِلَى البَرِيدِ لِأَشْتَرِيَ طَابِعًا بَرِيدِيًّا

私はこれから切手を買うために郵便局に行きます。[接・1単]


5 強調法

*未完了形には第4の法として《強調法》があります。しかし、この法は稀にしか使用されないので、本書では説明を省略します。


6 重弱動詞の活用

طَوَى [Ai](折る)という動詞は、二重に不規則的です。この動詞は第2語根が و ですからくぼみ動詞ですし、また第3語根が ي ですから弱動詞でもあります。

*しかし、このような《くぼみ弱動詞》では、第2語根は通常の子音として強変化します。そのため、この型の動詞に見られる不規則性は、弱動詞の活用に起因する不規則性に限られます。従って طَوَى [Ai] の場合は、実質的には بَنَى [Ai] と同型の活用になります。

[13−4]重弱動詞基本形 طَوَى の活用


完了形

未完了形


単数形

双数形

複数形

単数形

双数形

複数形

3男

طَوَى

طَوَيَا

طَوَوْا

يَطْوِي

يَطْوِيَانِ

يَطْوُونَ

3女

طَوَتْ

طَوَتَا

طَوَيْنَ

تَطْوِي

تَطْوِيَانِ

يَطْوِينَ

2男

طَوَيْتَ


طَوَيْتُمَا

طَوَيْتُمْ

تَطْوِي


تَطْوِيَانِ

تَطْوُونَ

2女

طَوَيْتِ

طَوَيْتُنَّ

تَطْوِينَ

تَطْوِينَ

1共

طَوَيْتُ

طَوَيْنَا

طَوَيْنَا

أَطْوِي

نَطْوِي

نَطْوِي


*また、接続形と要求形の作り方も、弱動詞の場合と同様です。なお、要求形の短母音人称群では第3語根が脱落しますが、これについては次の第14課を参照してください。


接続形

要求形


単数形

双数形

複数形

単数形

双数形

複数形

3男

يَطْوِيَ

يَطْوِيَا

يَطْوُوا

يَطْوِ

يَطْوِيَا

يَطْوُوا

3女

تَطْوِيَ

تَطْوِيَا

يَطْوِينَ

تَطْوِ

تَطْوِيَا

يَطْوِينَ

2男

تَطْوِيَ


تَطْوِيَا

تَطْوُوا

تَطْوِ


تَطْوِيَا

تَطْوُوا

2女

تَطْوِي

تَطْوِينَ

تَطْوِي

تَطْوِينَ

1共

أَطْوِيَ

نَطْوِيَ

نَطْوِيَ

أَطْوِ

نَطْوِ

نَطْوِ


(例1) كَيْلاَ يَطْوِيَ المُسْتَخْدَمُونَ الظَّرْفَ 局員たちが封筒を折らないためです。[接・3単男]

(例2) لاَ تَطْوُوا مِنْ فَضْلِكُمْ どうか折らないでください。[要・2複男]


1要求形は「短形」と呼ばれることもありますが、本書では「要求形」と訳します。