◆1 弁別詞

*先行の形容詞や動名詞、または動詞の意味範囲を限定して、状況を正確にするために用いられる様態補語を《弁別詞》と言います。弁別詞は対格におかれます。

(例1)قَدْ تَرَكَ لَنَا سَلَّةً مَمْلُوءَةً تَمْرًا

彼はナツメヤシの実で一杯の籠を私たちに置いていきました。

(例2)لِنَمْلَأْهَا بُرْتُقَالاً それをオレンジで一杯にしましょう。

*弁別詞はしばしば卓越詞とともに用いられます。

(例1)أَظُنُّ أَنَّهُ أَكْبَرَ مِنْكَ سِنًّا 私は彼はあなたより年上だと思います。

(例2)إِنَّ هَذَا التَّمْرَ أَطْيَبُ طَمْعًا مِنَ الَّذِي نَشْتَرِيهِ مِنَ السُّوقِ

このナツメヤシの実は私たちがスークで買っているものより味が良いと思います。

*アラビア語で劣等比較あるいは劣等最上級を表現するためには、弁別詞を用いる以外にありません。

(例)لِأَنَّ الكَعْكَ أَقَلُّ فَسَادًا مِنَ الأَزْهَارِ والفَوَاكِهِ

なぜならケーキの方が花や果物より腐りにくいからです。

*卓越詞と同じ語形の أَفْعَلُ 型をとる色彩形容詞を比較級あるいは最上級にする時は、まず أَكْثَرُ أَشَدُّ など意味の曖昧な卓越詞を最初に立てて、その後に対格においた色彩名詞を弁別詞として用います。

(例)لِأَنَّ شَعْرَهُ أَشَدُّ بَيَاضًا مِنْ شَعْرِكَ

なぜなら彼の髪はあなたの髪より白いからです。

*複数名詞を弁別詞として用いることもできます。

(例)لِنَمْلَأْهَا أَزْهَارًا それを花で一杯にしましょう。

*なお、11から99までの数詞の直後におかれる単数対格の名詞は、弁別詞の一種とみなされます。


2 時間・場所名詞 مَغْرِبٌ

*この名詞は動詞 غَرَبَ [Au](太陽が沈む)の時間名詞で、本来は「日の沈む頃」「夕方」を意味しますが、場所名詞としても用いられます。その場合、この語は「日の沈む国・地域」ということから、北アフリカのマグレブ地方、特にモロッコを意味します。


3 譲歩詞 أَيُّ

*既に学んだように1、この語は本来「どの人」あるいは「何が」を問う選択疑問詞です。

(例) أَيُّ تِلْمِيذٍ خَرَجَ ؟ どの生徒が出ましたか

*この語はまた、「どんな人でも」「どんなものでも」という譲歩の意味を表すことがあります。否定詞とともに用いられると、強い打ち消しを表します。

(例) لَمْ يَقَعْ أَيُّ خَطَأٍ 間違いなどではありません2


1第1巻第22課参照。

2直前の母音が短母音 [a] である時、語末のハムザは、例えば خَطَأٌ (誤り)のようにアリフの台に書かれます。その語が所有格におかれた場合、通常は خَطَأٍ とそのままタウウィーンをとります。原書では خَطَإٍ と表記されていますが、書き改めました。