◆1 対格におかれた名詞
*フランス語では前置詞や副詞と解釈される語が、アラビア語では、不変化詞としてではなく、名詞、形容詞または分詞が対格におかれた語と解釈される場合が多々あります。
*アラビア語で「本来の前置詞」あるいは「対格におかれた辞」とみなされる語は、以下のように多くありません。
إِلَى 〜へ بِ 〜で حَتَّى 〜まで عَلَى 〜の上に عَنْ 〜から
فِي 〜の中に كَ 〜として لِ 〜に مِنْ 〜から
*この「本来の前置詞」に、誓言を表す وَ を加える場合もあります。なお、誓言を表す وَ の場合、後続の名詞は所有格におかれます。
(例) وَاللَّهِ 神かけて
*フランス語で前置詞とみなされるこれ以外の語は、「状況補語として対格におかれた名詞」として解釈されます。その場合、後続の所有格におかれた名詞は、名詞句の補語として解釈されます。たとえば、以下のような語です。
أَمَامَ 〜の前方に وَرَاءَ 〜の後方に قَبْلَ 〜の前に بَعْدَ 〜の後に
فَوْقَ 〜の上方に تَحْتَ 〜の下に عِنْدَ 〜のもとに قُرْبَ 〜の近くに
*たとえば、 أَمَامَ الدَّارِ (家の前に)という表現は、 فِي أَمَامِ الدَّارِ と同値の表現とみなされます。同様に、 قُرْبَ الفِرَاشِ (ベッドの近くに)という表現は、 فِي قُرْبِ الفِرَاشِ と同値の表現とみなされます。
*また、 مَعَ (〜と共に)も、学者によっては「状況補語として対格におかれた名詞」とみなされることもあります。
*最後に、 مُنْذُ または مُذْ (〜以来)は、「本来の前置詞」とみなされることもあれば、「状況補語として対格におかれた名詞」とみなされることもあります。
◆2 副詞節の解釈
*フランス語で副詞節として解釈される従属文が、アラビア語では「状況補語として対格におかれた名詞」構文とみなされる場合があります。
(例) سَنَتَعَشَّى حِينَ يَصِلُ أَبُوكَ あなたのお父さんが着いた時、夕食をとりましょう。
この文で、 حِينَ (〜した時)は、名詞 حِينٌ (瞬間)が状況補語として対格におかれたものとみなされます。また、この語がタンウィーンをとらないのは、後続の文によって文法的に限定されているためと解釈されます。
*以下のような構文も可能です。
(例) قَدْ لَقِيتُكَ يَوْمَ ذَهَبْتُ إِلَى المُسْتَشْفَى 私は病院に行った日にあなたに会いました。
* اليَوْمَ (今日)や الآنَ (今)のように特定の時間を示す語は、通常冠詞をとりますが、これは古来、冠詞が指事形容詞の役割を果たしていたためです。
(例1) اليَوْمَ 今日= فِي هَذَا اليَوْمِ この日
(例2) الآنَ 今= فِي هَذَا الآنِ この時
*なお、冠詞は、以下のような場合も、指事形容詞の役割を果たしています。
(例1) قَدْ وَصَلْتُ الصَّبَاحَ 私は今朝着きました。
(例2) أَيْنَ تَنَامُ اللَّيْلَةَ ؟ あなたは今夜どこで寝ますか。