第30課
ザイナブが彼女の部屋で座っていると、突然ベルの音が聞こえます。彼女が玄関に行くと、新しい本を持った一人の少年がいます。少年が彼女に尋ねます。
「ナジールはいますか?」
「はい、います。でも、彼は眠っています。」
「僕は本屋の息子です。これは父が遣わした本です。」
ザイナブは本屋の息子に感謝して、自分の部屋に戻ります。そしてナジールがベッドから起きた時、ナジールのところに行って言います。
「これは本屋さんがあなたに遣わした本よ。贈り物なの?」
「贈り物じゃないよ。昨日僕は本屋に入ったんだ。そして、この本を買って代金を払ったんだ。すると突然、男の子が泣いているのを聞いたんだ。外に出てみると、彼は一人だったんで、僕は彼に尋ねてみたんだ。」
「どうして君は泣いているの? 誰かにぶたれたのかい?」
「いいえ、僕は誰にもぶたれなかったよ。」
「君の名前は?」
「僕の名前はサミールさ。」
「どこに住んでいるの?」
「僕、わからない。」
「それじゃ、お父さんの名前は?」
「ハッジのアブー・バクルだよ。」
「そこで僕は彼の手を取って、一緒に町内の通りを歩き始めたんだ。そして一軒ずつ家の中に入って、こう尋ねたんだ。”誰かこの少年を知りませんか?”とか、”誰かハッジのアブー・バクルさんを知りませんか?”とかね。
ハッジのアブー・バクルの家をみつけるまで1時間かかったよ。だって、本屋から随分遠かったからね。僕が着くと、少年のお父さんはとても喜んで、僕にコーヒーをご馳走してくれたんだ。そして彼の家を出る時、僕は本のことはすっかり忘れて、本屋には戻らなかったんだよ。」