第6課:巡礼者の出発
ここはカサブランカ空港のホールです。その中は人で混雑しています。なぜなら今日は、巡礼者の出発の日だからです。アフマドはお父さんとお母さんと一緒に、おばあさんを見送りにやって来ました。数分前におばあさんは彼らに別れを告げて、飛行機に乗り込みました。彼らは今、飛行機の出発を待っています。
アフマドがお父さんに尋ねます。
「この飛行機はメッカまで行くの?」
「いや、ジッダで止まるんだ。ジッダで人々はバスや車に乗ってメッカに向かうんだよ。」
「いつ出発するの?」
「もうすぐ出発すると思うよ。」
「でも、空が雲で黒くなってきたよ。こんなに空が黒くて、出発できるの?」
「空が黒くなっても飛行機の運航には差し障りないよ。だって飛行機は雲の上を飛ぶんだから。」
「でも、たぶん雲は離陸の邪魔になるよ。」
「もうじきわかるさ。」
十分後雲は流れ去り、太陽が現れます。そしてエンジンが回転し始めます。それから飛行機は滑走路の上を走り、離陸します。
飛行機が視界から消えた時、アフマドのお父さんが奥さんに言います。
「車の鍵は持っているかい?」
すると彼女の顔は青ざめます。彼女は言います。
「私のハンドバッグはどこ? 私のハンドバッグが見当たらないわ。」
でも、アフマドは床にかがんで、お母さんのハンドバッグを拾い上げます。
「お母さんのハンドバッグはここにあるよ。さっき僕の両足の間に落ちたんだ。」