第14課:パンクしたタイヤ
アブドッラー氏が息子に言います。
「サリーム、疲れているようだね。」
「僕、公園からここまで歩いてきたんだ。」
「どうして自転車で来なかったんだい?」
「自転車は押してきたけど、乗っては来なかったんだ。だって、タイヤが一本パンクしちゃったから。」
「お兄さんが自分の自転車にお前を乗せてくることはできなかったのかい?」
「僕はお兄さんを呼んけど、返事してくれなかったんだ。」
お父さんは上の息子を呼びます。
「ナジール!」
ナジールがやって来ます。
「はい、お父さん。」
「どうしてお前は弟を乗せようとしなかったんだ?」
「そんなこと、いつ僕に言ったのかなあ?」
「車輪がパンクした時にお前を呼んだけど、お前は返事しなかったから歩いて帰ってきたと言っているぞ。」
「僕はそんなこと聞いていないよ。だって僕は弟より1分早く公園を出発したんだから。でも、弟は文句なんか言えないよ。だって、疲れて当たり前なんだから。」
「どうして疲れて当たり前なんだ?」
「だって、弟は公園の外の道で自転車を乗り回していたんだ。僕は20回も弟にこう言ったんだよ。”君の2本の車輪がパンクしないように、自転車でこの道を走っちゃいけないよ。ここにはたくさん石があるから”って。でも、弟は僕の言うことに耳を貸そうとしなかったんだ。」
アブドッラー氏はサリームの方に向き直ります。
「どうしてお前はお兄さんの言うことを聞かなかったんだ?」
「だって、友だちがあの道で自転車に乗ろうとしてたから。僕、友だちと別れたくなかったんだ。」
ナジールがお父さんに言います。
「忘れないでね、お父さんはたった一ヶ月前に弟のタイヤを交換してあげたばかりだよ。だから弟に別のタイヤなんか買ってあげることないよ。」
お父さんが言います。
「私が今日か明日にでも買ってやると思われたら困るね。学校の成績がそれに見合うまでは、歩いて疲れさせておけばいい。」
その時、お母さんが入ってきて、サリームを慰めます。
「サリーム、泣かないで。お父さんの言葉は私も聞いたわ。でも、私、知っているわ。お父さんは近いうち、そのタイヤを交換してくれるわ。だって、あなたの先生はあなたにとっても満足しているんだから。」