1 ダブル動詞

*第2語根と第3語根の子音が同一の動詞を、ダブル動詞といいます。

(例1) شَمَّ [Au] 嗅ぐ(語根は شمم

(例2) مَسَّ [Aa] 触る、触れる(語根は مسس

*ダブル動詞には فَعَلَ 型と فَعِلَ 型と فَعُلَ 型がありますが、その多くは فَعَلَ 型です。

*また فَعَلَ 型には、未完了形の特徴母音として [u] / [i] / [a] をとるものがありますが、 [a] をとるものは少数です。


2 ダブル動詞の活用

*ダブル動詞の同一子音は、ある場合は分離して書かれ、ある場合はシャッダを冠して一つに統合されます。それを決定するのは、3つの語根がどのように母音を持つか子音を持つかということで、母音の種類(=音価)には関係ありません。

*では、 شَمَّ [Au] を例にとり、その活用をみていきましょう。

第1語根と第2語根、第3語根がともに母音を持つ時は、第2語根は母音を失って第3語根と統合されます。

(例)完了形の三人称単数男性形: شَمَّ شَمَمَ

第2語根と第3語根がともに母音を持ち、かつ第1語根がスクーンの時は、第2語根はその母音を第1語根に引き渡し、自身は第3語根と統合されます。

(例)未完了形の三人称単数男性形: يَشُمُّ يَشْمُمُ

第3語根がスクーンの時は、2つの語根は分離して書かれます。

(例)完了形の二人称単数男性形: شَمَمْتَ



最終形


理論形


接尾

第3

第2

第1

接頭


接尾

第3

第2

第1

接頭




مَّ

شَ




مَ

مَ

شَ




DD

V




D

D

V





مُّ

شُ

يَ



مُ

مُ

شْ

يَ



DD

>




D

D



تَ

مْ

مَ

شَ



تَ

مْ

مَ

شَ



V





D




*結局、ダブル動詞の同一子音の変化については、次のような法則が成り立ちます1

第3語根がスクーンの時は、分離表記する。

第3語根が母音を持つ時は

(a)第1語根が母音を持つ場合は、第3語根の母音で統合表記する。

(b)第1語根がスクーンの場合は、第2語根の母音を第1語根に移動した後、第3語根の母音で統合表記する。

*なお、前述のように、ダブル動詞には少数ながら فَعِلَ 型や فَعُلَ 型もありますが、ここでは前者の例として ظَلَّ [Ia](留まる)の活用を、 فَعَلَ [Au]型と並べて掲げます。


ダブル動詞の活用(単数形)


شَمَّ [Au]

ظَلَّ [Ia]


完了形

未完了形

完了形

未完了形

三単男

شَمَّ

يَشُمُّ

ظَلَّ

يَظَلُّ

三単女

شَمَّتْ

تَشُمُّ

ظَلَّتْ

تَظَلُّ

二単男

شَمَمْتَ

تَشُمُّ

ظَلِلْتَ

تَظَلُّ

二単女

شَمَمْتِ

تَشُمِّينَ

ظَلِلْتِ

تَظَلِّينَ

一単

شَمَمْتُ

أَشُمُّ

ظَلِلْتُ

أَظَلُّ


*このように فَعِلَ 型もその活用は فَعَلَ 型と全く同型です。ただ完了形の第2語根の母音が [a] から [i] に変わり、未完了形の特徴母音が [u] から [a] に変わっただけです。


3 特殊動詞 رَأَى

*弱動詞 رَأَى [Aa](見る)は、基本的には第19課で学んだ弱動詞 نَهَى [Aa](禁じる)に準じた活用をします。完了形の活用は同型ですが、未完了形では例外的に、第2語根のハムザはその母音を第1語根に引き渡し、自身は消滅します。

特殊動詞: رَأَى [Aa] の活用(単数形)


完了形

未完了形

三単男

رَأَى

يَرَى

三単女

رَأَتْ

تَرَى

二単男

رَأَيْتَ

تَرَى

二単女

رَأَيْتِ

تَرَيْنَ

一単

رَأَيْتُ

أَرَى


*なお、完了形の三人称単数男性形に接尾型代名詞が後続すると、第19課で述べたように語末のアリフ・マクスーラはアリフに変わりますが、その結果、第2語根のアリフと連続してしまうため、最終的に両者はマッダ記号で統合されます。

(例)رَأَى + نِي 彼は私を見た→ رَأَانِي [第3語根の変更]→ رَآنِي [両語根の統合]


◆4 従位接続詞(2) لَمَّا

لَمَّا (〜した時)は時間を示す従位接続詞です。ただしこの接続詞は、動詞の完了形とともにしか用いられません。

(例) لَمَّا رَجَعَ الطَّبِيبُ أَمْسِ فِي المَسَاءِ 昨日の夕方、医者が戻ってきた時


◆5 能動分詞(6)

*アラビア語では能動分詞がしばしば、現在や近い未来の動作あるいは状態を示すために用いられます。

(例1) أَنَا نَازِلَةٌ 私は降ります/あるいは、私はもうすぐ降ります

(例2) أَنَا خَارِجٌ 私は出ます/あるいは、私はもうすぐ出ます

1なお、この法則はダブル動詞に留まらず、同一子音が連続した場合の変形規則としても有効です。