14課:ムハンマドの贈り物

アブドッラー氏が仕事を終えて家に入ってきます。すると、ナジールが言います。

「お父さん、さっき知らない男の人が来てお父さんのこと、尋ねていたよ。」

「どんな人?」

「お父さんより年上だと思う。だって、お父さんの髪よりもっと白かったから。」

「なぜ私について尋ねたんだろう?」

「ナツメヤシの実で一杯の篭を置いていったよ。夕方、戻ってくると言ってた。」

「そのナツメヤシの実はどこだい?」

彼の奥さんが言います。

「ほら、上にハンカチがかかっている、あの篭の中よ。私たち、誰も触れていないわよ。だって、あの篭を持ってきた男の人は私たちを知らないし、私たちもその人を知らないんだから。私、思うんだけど、あの人、間違えて、私たちのものじゃない物を置いていったんじゃないのかしら。」

アブドッラー氏は篭に近づいて、ハンカチを取ります。すると、その下に手紙があります。彼は手紙を読んで言います。

「間違いなんかじゃないよ。このナツメヤシは、砂漠で働いている友人のムハンマドからの贈り物さ。この篭を持ってきたのは彼の同僚の一人なんだ。」

ナジールがナツメヤシを一粒食べて言います。

「このナツメヤシ、いつも市場から買っているものよりおいしいよ。」

お母さんが言います。

「この篭を空にしなくちゃいけないわ。だって、あの男の人は間もなくやって来るのよ。」

アブドッラー氏が言います。

「でも、この篭を空で返すわけにはいかないぞ。」

ナジールが言います。

「それじゃ、オレンジで一杯にしようよ。」

お父さんが答えます。

「ムハンマドと彼の同僚たちは、トラックの運転手なんだよ。毎週首都と砂漠の間を走って、野菜や果物を供給しているんだ。」

ザイナブが言います。

「それじゃ、花で一杯にしましょう。」

ナジールが彼女に言います、

「花だったら、ムハンマドさんの家に着く前に、枯れてしまうんじゃないのかな?」

お母さんが言います。

「ケーキで一杯にしたらどうら? 実は、私、昨日たくさんケーキを作ったの。ケーキなら腐らないでしょう。」

アブドッラー氏が言います。

「それはいい考えだ。ケーキの方が花や果物より腐りにくいからね。よし、彼に、君の手作りのケーキを送ることにしよう。」